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公開日:2017/08/04

代表ブログ

訪問看護の2つの課題

昨日、聖路加国際大学において、
第三回新卒訪問看護師育成者養成講座が行われた。
 
昨日は、築地で火事があったり、地震があったり。
 
さて、訪問看護業界でも、大きな「リスク」がある。
 
1、働く人の高齢化と若い成り手が入らないことによる衰退
2、質が低く利用する方々や地域から信頼を失うことによる衰退
 
1の少子高齢化は、現在、訪問看護師の平均年齢が48歳で、
新卒は、6万人の卒業のうち年50人程度の状況。
 
このままだと世代交代できずに衰退産業になるため、
新卒や若い看護師を訪問看護業界に呼び込むために、
・教育プログラムの普及
・採用や啓発、魅力PR
・入職後の経済的負担のための補助金等の設置
・若い人を育てる人たち、若い人同士の相談の機会提供
・全体的な課題把握の調査と解決方向性検討
・基礎教育での在宅看護学としての確立
・基礎教育での新卒でも可能であることの教育
・実習時期の前倒しと就職説明会への訪問看護事業者の誘致
など、様々な取り組みが行われてきている。
 
そして、訪問看護ステーションが、本気で新卒を採用するために、
今までは、職人が集まってきて、それぞれのやり方で訪問看護をしてきたところから、
新人に対して、組織としての共通認識、共通の教育根拠をもって、看護を見える化し、
経営していく体制へとパラダイムシフトが起ころうとしている。
 
また、経営者は、すぐに稼いでくれて、質の高い看護を提供する人財だけでなく、
はじめは教育投資が必要だけれど、新しい風を送り込んで、
将来の中核的役割を担う人財を採用していこうと、
短期的視点から中長期的視点で、取り組み直している。
 
知識、技術の教育だけでなく、落ち込むこともあるので気持ちのフォローをすることなど
指導体制や指導環境を大きく変えていくことにも挑戦している。
 
人事考課においても、訪問看護の質や量だけでなく、教育の質や量についても
正当に評価されていけるよう、経営の仕組みを変えている。
 
おそらく、この取り組みが、進むことで、
これまでは、プランターを買ってきて育てて収穫していたところから、
畑を耕し、種を植え、多用な生態系に配慮、むしろ、生態系を作っていくことになる。
 
自動車業界がガソリン中心から電気中心に変化していくように、
ガソリンが尽きる前に、訪問看護業界も変わっていく必要がある。
 
2の質の問題は、経営の問題や人材の質の影響が大きい。
 
経営者が利益重視、件数重視のケース。
また、人材として、病院で医師の指示待ちに慣れてしまい、生活の質を高めていけないケース。
この二つが多い。
 
訪問看護業界に紛れ込んでくる難民看護師もおり、
しっかり、訪問看護において必要な考え、知識、スキル、マインド等を
芽生えさせていく必要がある。
 
ただ、全国に約1万カ所ある訪問看護ステーションの人材や教育、看護の質についての
評価やガバナンスは行政による監査だけでは限界がある。
 
上場企業には、証券取引所や株主、法規制による経営ガバナンスがある。
訪問看護業界における質担保の仕組みをいかに構築していくか。
 
現状は、毎年数百カ所の訪問看護ステーションが新規設立される一方で、
休止や廃止となるところも多く、業界として不安定であるのは、
「参入障壁」「継続障壁」「撤退障壁」が低いことが原因だ。
 
いずれ100万人以上が利用する訪問看護。
 
信頼してもらい続ける業界にしていくためには、
規制と質に対する経済的評価が必要である。
 
その実証実験や社会的インパクトのシミュレーションを
現場からしていけるとよい。