インタビュー記事Vol.4 後編。前編では、渡邉さんの慢性期看護の経験や「全人的に看る」価値観に触れました。後半では、そんな渡邉さんの転職時、そして訪問看護師になってからのエピソードについて具体的に伺っていきます。

<プロフィール>
渡邉 里菜
ケアプロ訪問看護ステーション東京 中野ステーション
2018年よりケアプロ訪問看護ステーション東京に入職。それまでは、大学病院で勤務した後、海外でアシスタンストナースとして勤務。学生時代より、慢性期の看護や在宅での看護に興味を持っており、帰国に合わせて訪問看護師の道へ。明るく、前向き、ステーションのムードメーカー。

★前編はこちら:治療ができない中での看護|スタッフ・インタビュー 渡邉里菜[前編]

 

話が変わりますが、帰国後の仕事は、どういう基準で選んだんですか?

帰国してからは、都内に8箇所あるオリンピック病院に転職したいなと思っていたので、最初は病院の見学に行きました。でも、改めて自分のやりたいことを考えた時に、海外で働いたからこそ逆に自分の地元や地域、日本を良くしていきたいって思うようになりました。日本の医療費が圧迫されている中で看護師として「自分は何ができるんだろう」って。大学病院で働いていた経験を振り返ると、治療ができなくなった方のほとんどが療養型病院に転院になっていたし、本人たちも多くの方が望んでいなかったことを思い出したんです。家族が「家では支えられない」っていうからやむなく療養型病院に転院する方が多かったんですね。その時に、「家で暮らすことを支えること」や「医療費を抑制すること」に自分も貢献したいって思い、ケアプロの存在を見つけたんです。社長の川添さんの記事やホームページをみて、利用者さんと社会の利益の追求の両方を掲げていることがいいなと思って、一番理念に共感した会社だったので、ケアプロに転職することに決めました。

 

はじめて訪問看護師になる上で、不安はなかったですか?

病棟での経験が3年だけだったので、病院でいろんな疾患をみてからのほうがいいか悩みました。なので、母校の先生に相談してみたんです。その時は、訪問看護って、見方を変えると「土日休み」とか「夜勤がない」とかバリバリ働きたくない人が多いっていうイメージを持っている方もいて、最初学校の先生には渋い顔をされてしまいました。でも、話の中で、ケアプロへの就職に考えてるって言ったら、先生が目の色を変えて「いいじゃない!」って言ってくれたんです(笑)。理由を聞いたら、「学会でちゃんと発表をしたり、若手を育てて活躍させようっていう雰囲気があるところよね!」って先生が教えてくれて、その先生の言葉でますます背中を押された感じになりました。あとは、悩んでいるうちに「まずはやってみないと分からないかな」って思うようになりました。

 

学校の先生にそう思ってもらえているのは、とても嬉しいですね!!
実際に訪問看護をはじめてみて、どうでしたか?印象的だったことを教えてください。

同行させてもらう時に、技術より前に、まず利用者さんとの関係性を構築するためのサポートをしてもらったことが印象的でした。例えば、利用者さん自身にこだわりがあったり、認知症によって易怒性も高い方がいるのですが、同行し始めの時は信頼がない上に、若いから余計に心配がられてしまうこともあったんです。そんな時に同行した先輩が、技術を教えてくれるより前に、私が利用者さんと信頼関係を作りやすい環境を創るために話を振ってくれたり、利用者さんに合わせた関わり方や無意識にしてしまっている言動についてアドバイスをくれたんです。訪問看護は、家に入れてもらっての看護なので、まず関係性の構築が大事で、時間をかけて少しずつ関わっていくことが大事なんだなということに気が付きました。

 

まずは信頼関係が大切、ということなんですね。
その点でいうと、最初はどの方とも信頼関係がない状況ですが、困ったことはなかったですか。

最初はバイタルを測るだけでも、「お前じゃだめだ」って言われることもありましたね(笑)。「大丈夫です」って無理にやって余計に不信がられたりするわけにもいけないし、信頼関係を結ぶようにするのは本当に難しいなって思いました。その時は、同行した先輩の声掛けや、あえて先輩が私を頼ってるように「薬のセットはこれで大丈夫ですよね」と確認を依頼してくれたりとアシストしてくれて、関係性を築いていきました。色んな人との関わりや先輩との振り返りを繰り返していく中で、「今の信頼関係だったらどこまで踏み込んで大丈夫か」、「『言われた通りにしかやらない看護』にならないようにしながら関係性を結んでいくためにはどうしたらいいか」ということを、少しずつ考えられるようになってきました。

 

サポートを受けながら、信頼関係を結ぶことを学んでいるのですね。
訪問看護師になる前と「ギャップを感じる」ということはありましたか?

やっぱり、病院は治療の場、家は生活の場という違いにギャップを感じました。当たり前なんですけど、訪問看護ではケアの意味・個別性・本人のニーズがとても大切です。医療的にファーストチョイスなことでも、本人の想いにそぐわないと意味がないことがあるんです。でも、そのことを理屈では分かっていても、価値観としてギャップを感じることがよくありました。例えば、利用者さんがお薬の飲んでいなかった時に、入社したての時は「飲み忘れは問題だ。飲ませなきゃ。」っていう医療的な良し悪しや対処がすぐに思い浮かんでしまっていたんです。

 

働く中で、そのギャップはどうなったんですか?

半年たった今は、お薬を飲まなかったことが重要なんじゃなくて、「なんで飲まなかったのかな?」ということを考えたり、話の中でさり気なく聞いてみたり。時に本人が「絶対飲みたくない!」って言うなら「飲まない中でどうしていったらいいかな?」ということを考えられるように思考が変わってきました。

 

病院での経験で、「在宅で活かせた!」と思えたことを教えてください。

自分の経験の中だと、化学療法の治療とかパーキンソン病の検査をどうしているのか、治療や検査後どういう点に注意していったら良いかということが分かるところですかね。医療も日進月歩なので、今後変わっていった時に強みとしていけるかはわからないですが、在宅から入院する予定のある人に具体的なお話ができたりするところは活きているかなと感じます。

 

在宅に、「できるようなった!」、「今後強みになりそう!」と思うとはありますか?

自分の心が広くなったことですかね。(笑)

 

そうなんですね。(笑)でも、結構そういう話をされる方多いですね。
具体的に、どんな場面でそう感じるんですか?

先程の「薬を飲ませなきゃ!」という例と重複しちゃいますが、「飲まなかったからいけない」ではなくて、「どうして飲まなかったのかな?」「飲まない中でどうしていくか?」というように素直に考えられるようになったことですね。静江先生(ケアプロに師匠コンサルとして来て頂いているベテラン訪問看護師)や副所長の長山さんとの面談などで、「在宅では色んな疾患を持っていてもデータでは表せなかったり状況で、今目の前にいる利用者さんを全人的にみて看護をしてくことが大事」、「在宅は問題抽出ではなく、ウェルネス思考で、強みを生かしていく考え方が大事」ということを教えてもらったんです。それから、意識して実践していく中で、自分の考え方や心が広くなってきた気がします。あんまりイライラしないというか、例えば病院で働いていたときの自分は、なかなかスムーズに歩けない方に少しイライラしてしまうことがあったんですけど、今はそういうことが全くなくなりました。

 

ウェルネスに考えることや渡邉さんの中での看護アプローチの幅が広がったからこそ、そう変わっていけたのかもしれないですね。
今後の抱負やさらに学んでいきたいことを教えてもらえますか?

嚥下摂食の看護にはとても興味があるので、専門性を深めて、「食べたい」をもっと支えていきたいと思います。認定看護師も目指してみたいなって思っています。あとは、千差万別ですが、家で暮らす・療養するということをもっと支えられるようになっていきたいです。

 

「食事を食べる」という当たり前なことが、当たり前にできるように支える看護、素敵ですね。
最後になりますが、今後渡邉さんのように、訪問看護にチャレンジしたい人に向けてメッセージをお願いできますか?

「気になる」って思ったタイミングが何かのご縁なので、まずは見学してみるとか、動いてみると良いと思います。一生に一回しかない人生なので、まずは行動してみて下さい。そうすると良くも悪くも色んなことを知れたり、気づけたりするので、行動した結果から次の決断できるのではないかなと思います。興味があれば、いつでも、見学にきてください!

 

★前編はこちら:治療ができない中での看護|スタッフ・インタビュー 渡邉里菜[前編]