看取り難民を救う訪問看護・居宅介護支援 ケアプロ株式会社

立ち上げの経緯

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東日本大震災がきっかけとなった

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ケアプロが訪問看護を開始するきっかけになったのは東日本大震災の被災地支援だった。

川添や志賀、小森、久慈などのケアプロナースは、3月下旬から宮城県石巻市の避難所を回って、感染対策や健康状態のチェック、医療機関紹介などを行っていた。避難所には、津波で薬が流された方、かかりつけの医師と連絡が取れなくなった方、家族を失って夜も眠れずに精神的に不安定な方がいた。

医療機関に通えない医療難民が多く、避難所には在宅医療が必要であった。「今日はどうですか?」と体調を尋ねながら、検温や血圧などバイタルサインのチェック、内服状況の確認、お通じの状況確認など、全身の状態に変化がないかを看ていったが、継続的に訪問看護が入る必要のある方が避難所に多いことがわかった。

そこで私たちは、石巻市の訪問看護ステーションの看護師の皆さんと一緒に、「石巻地域医療復興会議」を開催して地域の訪問看護ニーズを共有し、訪問看護の導入がスムースに行なえるよう活動していった。

看取り難民30万人の時代に

現地入りしたケアプロのスタッフは、皆看護師であった。
そこで3.11の惨状を見て、すぐさま被災地支援に乗り出した。

被災地で活動を続けている中、「“仮設孤独死”宮城で2人」という河北新報の記事※1)を見て、息を飲んだ。石巻の小学校や中学校で、独りで避難していた高齢者の方々の顔が思い浮かんだ。“独りで大丈夫だろうか?”と。

孤独死を防ぐために、避難所には、保健師が巡回したり、管理人が常駐して目配りはあった。しかし、その後も、誰にも看取られずに亡くなった孤独死の話を耳にすると、なんとも遣る瀬ない気持ちが込み上げていった。

避難所生活や仮設住宅での生活が多い被災地で、在宅医療が重要であることは当然だが、この課題は、日本全体においても大きな課題であり、2020年に死亡する140万人のうち看取り場所がない「看取り難民」が約30万人と試算されている※2)。

つまり、被災地で起きていることは、超高齢化が進む、将来の日本全体の縮図なのだ。私たちは、被災地の教訓から、10年後20年後の日本をこのような状態にしてはいけないと心に誓った。

ただ、課題は大きい。

現在、訪問看護の利用者は、2012年現在で約38万6000人。10年前の23万7000人と比べ、約15万人増えている。一方で、訪問看護ステーションで働く看護師は、2010年で約3万人で、10年前と比べ約4000人程度しか増えていない。

この数字を見た時に、本当にマズイっ!と思った。
訪問看護が全然足りない。

私たちは看護師としてどうしたら良いのか、悩んだ末、答えは一つしかなかった。

「ケアプロが訪問看護ステーションを立ち上げよう。」

さっそく、24時間365日対応の「ケアプロ訪問看護ステーション東京」を立ち上げることを決意し、2012年12月1日から立ち上げ準備に取りかかった。

(脚注)
※1)2011年7月16日付「河北新報」より
※2)「我が国医療についての基本資料 中央社会保障医療協議会」(H23)より

訪問看護を待つ人が50万人!?

私は大学1年生の時に、訪問看護のパイオニアである村松静子さんのお話を伺ってから訪問看護に関心を持っていた。そのため、「ワンコイン健診」を立ち上げながら、全国訪問看護事業協会の職員を兼務し、訪問看護ステーションの必要数や利用者数の研究に関わった。

それが今から約5年前である。

当時、全国訪問看護事業協会として厚生労働省の審議会への提案の中で、平成27年には、訪問看護の利用者を90万人、訪問看護師を9万人という目標を掲げていた※。 5年が経過してその目標に近づいているかと思っていたが、5年前と殆ど変わらず、現在の利用者は40万人、訪問看護師は3万人である。あと3年後には利用者90万人という目標だったので、現状とは50万人もギャップがあり、大きな危機感を抱いた。

※引用文献:「社会保障審議会介護給付費分科会 介護サービスの把握のためのワーキングチームにおける事業者等団体ヒアリング資料 訪問看護ステーションの現状と今後の展望について(平成19年11月13日 社団法人 全国訪問看護事業協会)」

夜間や土日対応のは1割しかない

また、訪問看護ステーションの絶対数が足りないだけでなく、「夜間や土日祝日に対応できるステーション」が全体の1割程度しかないこともわかった。

被災地から帰って、訪問看護ステーションの方々に話を伺いに行くと、「看護師が不足していて、訪問看護の受け入れを断らなければいけないことがある」 「働いている看護師は主婦が多く、夜勤や土日祝日の勤務が難しい」「訪問看護の24時間365日対応は難しく、人工呼吸器がついている方やがん、難病の方など医療依存度が高い方をお断りしなければいけないこともある」と。

この話を聞いて私は、在宅で安心して療養生活を送り、看取られる環境が十分に整っていないと察した。

一方で病院の看護部長や地域医療連携室のソーシャルワーカーの方々からは「在宅で最期を看てもらいたいという患者さんは多いけど、受け入れてくれる訪問看護ステーションを探すのが大変」「今後、さらに高齢者が増えるので、訪問看護が増えてくれないと・・」「例えば小児の場合は××地域に訪問看護ステーションがなくて困っている」など。どれも切実な叫びだった。

ヨスさんとの出会いで明るい兆しが

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しかし、ケアーズ白十字訪問看護ステーションの秋山さんに紹介された、オランダ人看護師のヨスさんとの出会いで明るい兆しが見えた。 オランダには日本の訪問看護ステーションとはまったくスケールの違うモデルがあったからだ。

ヨスさんら看護師が2006年に起業し、翌年1月に4人で始まったBuurtzorgは、その後急速に拡大。2012年12月現在、九州ほどの広さのオランダ全土で約500チームが各チーム10人体制で、看護師や介護士が約5000人で運営している。 管理部門は約30人、間接費は8%と他の在宅ケア組織の平均25%を大きく下回る。利用者は約5万人。

現在、オランダのすべての産業を通じて最も成長している事業者といわれている。

どのような仕組みが必要か

私たちは、24時間365日対応の訪問看護ステーションを増やしていくためにどうしたらいいかを考えた。

その結果、3つのポイントがあることがわかった。

1つめは、新卒看護師向けの「卒後訪問看護研修プログラム」を作ること。
2つめは、事業所の規模を「看護師10人チーム」を基本とすること。
3つめは、「独立開業支援プログラム」を作ること。

今まで新卒や新人の看護師が訪問看護をすることは無理だと言われることが多かった。しかし、土日や夜間も運営するためには、独身で体力のある若手の看護師がチームの中に一定数は必要である。

大学病院なども若手がいなければ、24時間365日対応はできない。しかし、訪問看護ステーションの多くは、平均年齢が40歳以上のところが多い。ただ、新卒看護師などの新人看護師はベテラン看護師と違って経験は浅いため、「知識」、「技術」、「コミュニケーション力」、「判断力」などをしっかり教育するプログラムが必要である。

また、事業所規模が「5人未満の小規模」の訪問看護ステーションが全国平均61%で、規模が小さいほど赤字傾向が強く、夜間対応が困難で、事務員を雇用できないため看護師が何でもやらなければいけない。そのため、看護師一人一人の夜間対応の負担を軽減し、経営を安定させるために、看護師10人で1チームを基本とすることが重要である。

ただ、1つの事業所を10人としても1年間に看取ることが出来るのは、多くても500人と考えると、看取り難民30万人を救うためには、単純計算でも30万人÷500人/チーム=600チームを日本全国に展開していく必要がある。

これはもう事業所が増えていくことをじっと待っていてもダメだ。増えないならば作っていくしかない、ケアプロが独立開業を志望する看護師を集め、支援していくしかない。

新卒や臨床経験が数年の新人でも、訪問看護をやりたい看護師はたくさんいるはずだ。彼らを訪問看護業界に流入させ、しっかり教育することで24時間365日体制を実現し、10人チームで経営を安定化させ、そのモデルを多店舗展開していく。そんな独立開業支援プログラムをつくることで、訪問看護の供給体制システムを変革し、看取り難民を一人でも救っていく。

ゼロから訪問看護を立ち上げる

私たちはとうとう、ゼロから訪問看護ステーションを立ち上げることを決めた。そこで、まずは手始めに、大先輩の訪問看護ステーションで現場研修をさせていただいたものの、手探りの中でのスタートだった。

そして今、ケアプロが立ち上げた訪問看護ステーションの看護師は、次のような日々を送っている。

朝8時半に出社して、更衣や訪問バックなどを準備し、午前に2件訪問し、昼食をとって、午後に3件訪問する。17時にオフィスに戻ると、主治医やケアマネジャーに報告や相談をする。「Aさんは、心不全の疑いで入院になった」「Bさんは、腹水が溜まっても痛い治療(穿刺)はしたくないということ」「Cさんは、次回は家族と看取りの時期や準備についてお話します」――などの会話がある。

そして、計画された訪問以外に緊急対応もある。

例えば、下肢の蜂窩織炎(足の炎症)で傷の処置を目的として訪問していた方がいた。
その方は、糖尿病や心臓病の持病があったが、朝方具合が悪いと電話があったため緊急訪問。しかし、家のドアの鍵が開いておらず声をかけても返事がないため、窓から侵入。すると、利用者が口から泡を吹いて意識が朦朧としており、すぐに救急搬送し、一命をとりとめた。

当番の看護師は夜間に備えて携帯電話を持って帰り、必要時は夜間も出動する。

事例:ケアプロが対応している事例の数々

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1. パーキンソン病の永六輔さん
「病気を抱えての放送はとても疲れます。リハビリで健康管理につとめています。」

2016年7月7日:お亡くなりになられました。謹んでご冥福をお祈り申し上げます。


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2. 頸髄損傷で四肢麻痺のヨシダさん
「日中は仕事なので、夜間訪問してくれて助かる。24時間365日対応して頂ける所があって初めて、本当の意味で障碍者の自立と社会参加が可能になる。その意味で、ケアプロは砂漠のオアシスである」と仰って頂けました。


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3. 糖尿病で足の傷が蜂窩織炎起こしていたCさん。
毎日の処置で約3か月で寛解。


在宅医療や終末期医療はどうあるべきか

私たちは、これまで紹介させていただいた事例でも言えることだが、治療に頼るのではなく、その人らしい生活を重視した医療が大切であると考えている。

厚生労働省によると2009年の1年間で、最も多かった国内の死亡場所は医療機関で81%、自宅での死亡は12%にすぎないとされている。だが、2008年の調査では、一般国民の63%が終末期の自宅療養を望むと回答している。希望通り、63%の人々が自宅で、少なくとも介護施設で終末期を迎えれば、多少の介護費用の増加を見込んでも、老人医療費が大幅に減る。

厚生労働省の発表によると、2010年度医療費総額は36兆6000億円で、前年度より1兆4000億円増加しているが、70歳以上の高齢者の医療費が16兆2000億円と大きな割合を占めている。 また、統計によって異なるが、国民一人が一生に使う医療費の約半分が、死の直前2か月に使われるという報告がある。

高齢者の医療費が高い理由は、人口呼吸器をつけたり、胃ろうをつけたりする延命治療の影響が大きい。胃ろうは、胃に穴をあけ、そこから栄養を補給する方法で、1990年代後半から日本でも急速に広まり、2012年現在国内の患者数は40万人以上にも上る。(胃ろうの医療費は、一人当たり月30万円程度で、約40万人いるため、月に約1200億円)。

それぞれが納得した終末期をめざして

もちろん、先端医療によって1秒でも生き続けたい人もいるが、そのことも含めて、自分が納得した終末期を送っていただきたい。

しかし、認知症や脳血管障害などで意向を確認できない意識レベルになってしまってからでは選択できないし、残された家族は本人に手厚い医療を受けさせる傾向にある。 そのため、意識のあるときに、どのような終末期医療を受けるのか、本人及び家族の意向を確認して、選択を支援することが大切である。

ケアプロの看護師も、病院から退院される方やそのご家族と終末期の医療について、急変が起きても自宅で看取るのか、それとも、病院に戻って治療をしたいのかを確認している。 そして、急変が起きても自宅で看取る選択を実現するためにも、24時間365日対応の訪問看護が必須なのである。

訪問看護業界に新しい風を

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こうして訪問看護ステーションの立ち上げを始めたケアプロには、安心して療養生活を送り、住み慣れた自宅での看取りを実現させることに想いを持つ看護師が集まった。

2014年4月現在、看護師15名、理学療法士1名、事務2名だが、バックグラウンドは様々だ。大学病院急性期病棟出身、訪問看護経験者、新卒、子育て中の主婦ナース、法学部に通う看護師。独立開業希望者もおり、福岡、鹿児島、沖縄、大阪など全国から集まっている。

若いメンバーが多いが、在宅医療の在り方を真剣に考え、若いからこそできる新しい仕組み作り(若い看護師が訪問看護に参画し、適切に教育を受けられるなど)に励んでいる。聖路加国際大学と「新卒訪問看護師」を育成するためのプログラムセミナーを開催したり、日本看護協会など業界団体の方にも応援して頂いて、新卒・新人訪問看護師応援サイトを立ち上げるなど、ケアプロで培ったノウハウを業界に情報発信している。今後は、24時間訪問看護を行うことの客観的裏付けと実際に24時間運営をするためのノウハウを東京大学の研究者と一緒に作り上げていく予定である。

仲間と力を合わせ前進あるのみ!

訪問看護ステーションが足りず、「どんな症状でも、いつでも、どこでも」訪問看護を利用できる環境にはなっていない日本で、今後、急増する看取り難民への対応は喫緊の社会的課題である。

世の中にあるコンビニやレストランなど様々な業種が土日や夜間に営業しているが、訪問看護ステーションの9割が土日祝日夜間は基本的に休みである。しかし、保険を利用できる医療や介護は公的サービスだからこそ、休日や夜間などをしっかり対応していくところがなければならない。

そのため、ケアプロでは24時間365日サポートできる仕組みを作り、市民の方々が、住み慣れた在宅で、安心した療養生活とその人らしい看取りが実現できるようにしていく。

まだまだ駆け出しの身ではあるが、初心を大切に、仲間と力を合わせ、前進あるのみなのである!

ステーション立ち上げスタッフ募集中

ここまでお読みいただく中で、訪問看護の必要性と今後の課題について、少しでも多くの方と想いを共有することができましたら幸いです。

今後、急増する看取り難民という社会的課題を解決するキーパーソンは間違いなく訪問看護師です。

世の中にはコンビニやレストランなど便利なサービスはありますが、訪問看護は地域で暮らす人の根幹を支える公的サービスとして、大きな社会的使命を持っています。

訪問看護の現場は楽しいだけではなく、辛いこともありますが、独り暮らしの高齢者や障害をお持ちの方などにとって、訪問看護師の存在がどれだけありがたいことか、自宅で看取ることができた家族の支えになれることか、ということは現場の看護師冥利だと思います。

訪問看護に興味が有る方は、ぜひ、看護師人生の重要な選択肢として、チャレンジしていただければと思います!

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