今回は、訪問看護の現場でフットケアのプロを目指す蜜澤の姿を紹介します。
※蜜澤は登山家タイプです。目指す山(フットケア領域)が明確で、どんな困難があろうとも、創意工夫しながら、毎日進歩しているミッツさんを見ると、凄いなぁと刺激を受けます。入社前から手紙のやり取りやプレゼントが上質な肌クリームなど、人柄が色々なところに現れています。
●足病変の多さに驚き
北関東の獨協医科大学病院に勤務していた蜜澤孝徳は、6年間の在職中、4年間は透析室に所属していた。地域の基幹病院だったため、透析室を訪れる糖尿病や下肢動脈疾患の患者さんの中には、下肢切断のために入院している患者さんも多かったという。
「配属されたばかりの頃は、足病変の多さに驚きましたね。透析室では透析治療の管理のほかに、足の状態の観察に始まるフットケアも行っていました」
●確かな技術を身に付けたい
「外来には糖尿病看護や透析看護の認定看護師がいて、たとえばドイツ式フットケア『フスフレーゲ』による高度な技術を駆使したケアや、在宅での日常ケアのポイントを患者さんにていねいに説明する様子を日々目の当たりにしていました。
このような環境で仕事をするうちに、いつか自分も確かな技術に裏打ちされたフットケアを身に付けたい、と考えるようになったんです」
●悩み抜いて訪問看護師に
蜜澤の真面目な働きぶりを見ていた看護部の上司は、認定看護師の資格取得を熱心に勧めていたという。高度な医療に接することのできる恵まれた環境だったが、一方で蜜澤は「下肢切断という重篤な事態を避けることはできないのか、予防することはできないのか……」と疑問を抱えていたのだ。それは自分の進路にも影響を与えることになる。
「大学病院で高度な知識と技術を磨くべきか」「患者さんとの密接な関わりの中で予防的ケアに携わるべきか」――。進路を模索する中、「ケアプロ」の活動に興味をひかれ、悩みに悩み抜いた結果、訪問看護師の道を選択することになる。
●「後悔しない」と直感でピンときた
「フットケアのプロになりたい、という気持ちにブレはありません。でも挑戦の場を大学病院にするよりも、在宅医療の現場に求めるほうが後悔しないと直感的にピンときたんです」
蜜澤の言葉に力がこもっていた。
●フットケアをとことん追求
糖尿病の利用者さんを訪問することに
大学病院の透析室で活躍し、糖尿病看護や透析看護の認定看護師取得を勧められていた蜜澤孝徳。在宅医療の現場に飛び込んでみると、足病変を抱える利用者さんが多いことに気づかされた。
白癬菌で変形した爪、血流障害が出現している足……。その中で出会ったのが糖尿病の利用者さんだった。メインの担当ではないが、足の血流障害が悪化していたので、ほぼ毎日訪問することになった。
●足全体に壊疽が進行
「足全体に壊疽が進行していて、親指が取れかかっているほど。下肢切断は免れない状態にもかかわらず、家族の方針で入院が難しいケースでした。さらに、メインの担当者は壊死部分の感染悪化を予防するための洗浄で、お湯を大量に使わなくてもすむ方法について悩んでいました。そこで、自分が大学病院で取得した泡の力で汚れを落とす『泡洗浄』を提案したのです」
百円均一で購入したバケツやスポンジ、ビニール袋を活用し、ボディソープをめいっぱい泡立て、患部を泡で覆って洗浄。皮膚を労わる洗浄法に利用者さん家族もケアプロスタッフも感心したのである。
●病院での学びを活かして
「結局、この患者さんは脳梗塞で入院することに。非常に稀なケースでしたが、大学病院透析室での学びを在宅医療の現場で初めて活用できたことが、とてもうれしかったです。
それだけに、もっとフットケアの技術を高めたいと強く思いました。糖尿病や血流障害を発症した時点でフットケアを導入して、足の状態の観察やていねいなケアを行えば、壊疽による下肢切断は80%以上防げるとされています。だからこそ、フットケアの重要性をもっと訴えていきたいです。
また、私たち訪問看護師が足の異変にいち早く気づき、ケアと指導を徹底させることも使命。爪の切り方などの細かなケアの指導、家族への指導も含め、パンフレットなども作成するほか、大学病院時代の経験を活用しつつ、フットケアを追求したいと考えています」
●在宅でフットケアのプロを目指す!
「学会発表はまだまだ先のことで、今は在宅医療で応用できる最新情報を収集することに力を入れていきたいです」。在宅医療の現場でフットケアのプロを目指す蜜澤。その活躍を期待したい。
※「ナース専科コミュニティ WEBマガジン」で連載したものです。
(http://nurse-senka.jp/feature/)