「全国1万箇所の訪問看護ステーションを、
もう増やさなくても良いのではないか」
という問いをしてみました。
訪問看護ステーションを開業しようとしている人からすると、
「規制強化か!?」
と言われて、反対されそうです。
訪問看護ステーションの自由開業制STOPについては、
慎重に検討すべきことではありますが、
誰もが言い出しにくい状況なので、
今後の10年、20年、30年の業界のために、一石を投じます。
なぜ、このようなことを考えたかというと、
小規模の事業所がたくさんできたけれど、
大規模の事業所はまだ少なく、
小規模の事業所をたくさんつくるのではなく、
大規模の事業所を増やしたほうが良いのではないか、
と思ったからです。
過去10年の訪問看護市場について分析したところ、
訪問看護件数ベースで265%の伸びでしたが、
事業所数が増える「多店舗化(176%)」が、
一事業所あたり訪問件数が増える「大規模化(151%)」の伸びを上回っていたのです。
草木に例えていうなれば、間引きをせずに、
小さめの草木は多くなったけれど、大きめの草木はなかなか育たない。
病院も病床規制をせずに、立ち上げてOKとなると、
小さい病院ばかりになる可能性はあったのではないでしょうか。
小規模と大規模のそれぞれにメリットはありますが、
すでに、大規模のほうが良いというエビデンス(質と経営)も、
出始めています。
ケアプロでも、訪問看護ステーションが小規模から大規模に
進化するプロセスで、質や経営、職員の負担などが
どのように改善していったのかを、
第23回日本在宅ケア学会で研究発表しました。
大規模化すると利益率が高まったり、夜間コール負担が減ったり、
多様な利用者様を受け入れられるようになったり、
働く看護職等が研修や進学に行きやすくなったり、
取引先からの依頼を断らずにキャパシティ調整できたり。
つまり、草木が大きくなり、様々な果実ができ、
強い風など環境変化にも靭やかに対応できる幹ができ、
折れにくく潰れにくくなりました。
一方、私たちの近隣だけでも、事業所の休止や撤退が、
何件もありますし、小さいまま、なかなか大きくなれず、
疲弊しているところがあります。
発展途上のものは多産多死になりやすい。
そのため、大胆ではありますが、事業所数よりも、
一事業所あたりの看護職数を増やし、
機能強化していくことに重きをおくために、
今後の事業所数の伸びを抑える政策や
大規模化を推進する政策
(管理者育成、IT投資助成、大規模化ノウハウ共有など)
を検討すべきであると考えています。
もちろん、過疎地であれば、そもそも大規模化は必要ないため、
大規模化すべきところとそうではないところを地域別に分析し、
地域別のビジョンや戦略が必要です。
ただ、今後の多死社会において、日本人の4割の後期高齢者は、
東京、神奈川、埼玉、千葉、大阪、愛知の6府県に集中しますので、
大都市圏では、大規模化して訪問効率が高まるので、推進しやすい政策です。
今、訪問看護の供給体制は、大きなシフトチェンジの時代。
なお、こういったインフラサービスの市場変化は、他の業界でも同様に起きています。
例えば、スーパーマーケットです。
八百屋だけだったところに商店街ができ、
様々な専門店ができていく。
ある程度市場ができ、モータリゼーションが進み、
大型スーパーやモールができるというシナリオです。
商圏や生活圏、訪問看護圏が、どう変わるのか、
それに合わせてビジネスモデルが、どう変わるのか、
というのがポイントです。
もちろん、本当に大規模化することでメリットがあるのか、
懸念点とその解決策は何かを産官学連携で推進していく必要はあります。
例えば、下記のようなシナリオはありえるのか?
●事業所数:一定(1万箇所のまま)
●訪問看護師数:増えていく(10年後に3倍)
●利用者数:増えていく(10年後に3倍)
●訪問カバーエリア:不変(やや広がるとよい)
●経営効率:改善
●訪問効率:改善
●生産性(一人の訪問看護師の一日の件数):増加
●WLB(夜間大気の負担など):改善
8月24日25日の第22回日本看護管理学会において、
本提案の根拠となる研究発表をしてきます。
おそらく、異論や反論が多いと思います。
「規制改革派だったのに、保守派になったのですか」
と言われそうですが、規制改革も保守も手段であり、
目的によって、舵取りは変えるべきです。
そして、大規模経営をしていく上で、
そういった組織のマネジメントができる人財や
マネジメントの仕組みを作っていくことが肝です。
ということで、私たちも中途採用に力を入れ、
8月22日に、訪問看護ステーションツアーをします。
https://goo.gl/forms/Sl0IetupytgcCEjC3
約30年の訪問看護市場ですが、
これからの高齢多死社会が、日本の21世紀最大の波ですが、
波に飲み込まれないよう、新しい時代を切り拓いていきたいですね。
海外のモデルやこれまでの成功体験を鵜呑みにせず、
自分たちの地域の変化に必要な革新的なサービスを
プロデュースしていきましょう。