※なお、本文は「厚生福祉(時事通信)」への掲載記事に加筆・修正したものです。
<WHOにて>
WHOインドネシア事務所の方々からは、インドネシアの医療政策についても伺った。
国では保健省疾患コントロール局を2000年代前半に設置し、①喫煙による健康への影響を予防・軽減する法規がある州、県の割合や②NCDsの早期発見・予防・保健指導などを実施している州、県の割合について目標管理している。
州や県、村単位では、Puskesmas(保健センター)がプライマリ・ヘルス・ケアを担っており、Posbindu PTMがNCDs予防・コントロールのための健康増進機関として活動している。村などに出向いて、①BMI、②血圧、③血糖とコレステロール測定、④カウンセリングと保健指導 (食事、禁煙、ストレス、身体活動等)、⑤身体活動もしくは運動支援をしており、血液検査は1回100円程度で有料で実施しているが利用は少ないという。
そして国民一人あたりの年間医療費は2003年の約3千円から2008年は約5千円、総医療費における政府支出は55%。総医療費の対GDP比は2%(2008年)であり、ASEAN諸国が3%以上であるのに対して低い。インドネシアの医師は人口1万人に1名、看護師は8名(WHO2010年)となっている。
2014年に入って国民皆保険制度を開始したが、「本当に始まったの?」と思うくらいの段階であり、2019年達成予定とのことだが「本当に間に合う?」とも思われている。低所得者向け公費負担医療(Jamkesmas)は人口の30%、公務員とその家族対象の医療保険(Askes)は7%、民間企業社員とその家族対象の医療保険(Jamsostek)は3%である。保健省はインドネシア大学の研究チームと協働して、負担と給付のシミュレーションをし、保険料徴収方法などについて検討しているが、課題は山積み。
JICAインドネシアに勤務される方々とも面談した。JICAの支援自体は、急性期病院の看護師教育プログラムの開発と普及などである。皆保険制度で治療を受けられるシステムが整うことは重要だが、予防のための健診システムが整うことも重要。しかし、国家として法定健診のような精度はない。JICAの方からすると、インドネシアで日本のような充実した健診システムを構築することは難しく、項目を絞り、導入できる項目だけでも導入していくのが現実的だとおっしゃっていた。
インドネシアの医療は、感染症対策や母子保健から、災害医療や急性期医療の整備に移り、そしてこれからは生活習慣病予防、将来は在宅医療に力点が置かれていくと考えられる。