※なお、本文は「厚生福祉(時事通信)」への掲載記事に加筆・修正したものです。
これまでインドネシアの社会経済情勢、健康課題、医療システムについて見てきたが、もしインドネシアで「ワンコイン健診(セルフ健康チェック)」を事業参入するとしたら何に気をつける必要があるのか。外資企業の参入に対する規制リストをみると、1)最低投資100億ルピア(約1億円)、2)最低出資25億ルピア(約2500万円)、3)株主最低出資1000万ルピア(約10万円)などがあり、自社のみで資本を集めて現地法人を設立することには資金的なハードルが高い。そのため、現地でうまくやり抜くためには、現地で有力な企業グループと組むなど重要になってくる。
また初期資本を必要とする製造業の参入は歓迎だが、小売業やサービス業などはできるだけ国内事業者に任せたいという背景があるようだ。セブン-イレブンも小売業ではNGのため、レストランとして飲食業で許可を得ている。そのため、飲食業に必要な椅子とテーブルを入口付近に設けており、それが流行っている。
またインドネシア人でないと経理や人事のマネージャーになれないという体制面のハードルもある。最近は労使協定で最低賃金が上がってきており、西ジャワ州では州知事の意向で、いきなり160%増の最低賃金アップがあり、最低月給15000円くらいだったのが23000円くらいになった。日本のベースアップとは比べ物にならない。もし労使協定に違反すると、労働組合が暴徒化してストライキや集団暴力などのリスクも有る。そして、退職社員の給与6ヶ月分を払うなど撤退コストも高い。そして当然ながら保健人材のビザ取得については保健省人材局、薬事法関係は医療対策総局に確認する必要がある。
ただ、法律にどう書いてあるかよりも、当局がどう考えているかが重要というのが実態であるとのことだ。どんなことをしてもお金で解決することがあるとも言われているから恐ろしい。賄賂を要求されることもあるようだ。
それをインドネシア国民は当たり前のように思っていることに大きな違和感を持った。街では小さい子供がヘルメットを被らずにバイクを走らせ、遺跡の入館料が現地人に対して外国人は高額であり、売上計上せずに脱税する仕組みがあり、観光客に無理やり売りつけようとする行商たち。目先の部分的な利益にとらわれ、中長期的な全体最適の利益を考えていないのではないだろうか。インドネシアで事業を行うときは一緒に働く人たちへの教育が鍵になる。
日本としてはアベノミクスで海外での事業機会創出を推進していく方向性があり、インフラ事業や中小企業の海外展開などの支援予算がJICAの中でも重要視されてきている。そしてインドネシアで50年以上の取り組みをしてきたJICAの実績やネットワークは日本の大きな強みとなりえる。