▼はじめに
ケアプロ訪問看護ステーション東京の人材成長モデル(キャリアラダーやクリニカルラダーとも呼ばれます)について紹介したいと思います。これは、以前、岡田らが日本在宅医療連合学会でも発表したものですが、「病院と違う、訪問看護ならではの人材モデルを作りたい」「成長の度合いを可視化したい」「何ができて、次に何を学ぶべきか明確にしたい」といった現場や経営のニーズに応え、質の高いケア・やりがい追って働き続けられる組織作りに役立てていただけるはずです。ひとりひとりの看護師が明確な目標に向かって研鑽していくことで迷わなくなり、若手の看護師のように目指すべき方向性が不明瞭な部分が多く有ることで自己効力感等を得られない状況を克服し、管理者がスタッフの人事評価をする際の基準を明確にして戸惑わなくなります。
なお、本資料はあくまで参考にしていただき、自事業所の特徴を加味して求める人材像を明確にし、人材成長モデルを開発してください。
▼人材成長モデルの構造
横は、8段階の成長レベルに分類。
- 入職当初の新人のレベル
- 状態が安定している利用者への訪問ができるレベル
- 不安定な利用者への訪問ができるレベル
- 夜間待機等緊急時の訪問への対応もできるレベル
- 新規契約や新規の退院調整ができるレベル
- 様々な業務を行うことができかつチームのリーダーを務められるレベル
- リーダーを支援できるレベル
縦は、能力項目として、【運営】【看護実践】の2つに大別。
【運営】は、8つの小項目
- [ MVV・ステーション目標の理解]
- [メンバーシップ力]
- [共育・学ぶ力]
- [共育・教える力]
- [タイムマネジメント力]
- [訪問し続ける力]
- [地域活動・営業力]
- [リソースの活用力]
【看護実践】は、4つの中項目
- 〈関係を構築する力〉
- 〈ケアする力〉
- 〈協働する力〉
- 〈意思決定を支える力〉
それぞれの中項目ごとに3~17つの小項目で構成。
小項目には、アセスメントや人間関係などがあります。
▼開発方法と特徴
・日本看護協会が発表した「看護師のクリニカルラダー」をベースに作成しました。
・「看護師のクリニカルラダー」では、看護実践に着目していますが、ケアプロでは、【運営】の大項目を追加し、組織人としての能力、管理能力、教育能力等をいれました。それにより、組織への貢献について意識化することを促したり、互いに教育し合う(共育)風土の醸成等を目指しました。
・【看護実践】の大項目では、「看護師のクリニカルラダー」にはなかった〈関係を構築する力〉を追加しました。訪問看護サービス介入の大前提として、利用者やその家族と関係を構築し介入を行うことが重要であり、過去の育成会議でも、利用者やその家族との関係構築ができずケアの介入ができないことに躓く事例も多くあり、レベルごとの学習課題であるとも捉えられたため能力項目に入れました。レベルごとの項目としては、マナーを遵守して利用者や利用者家族との関係を構築することから、初対面の利用者や利用者家族と信頼関係を構築すること等を入れています。
・「看護師のクリニカルラダー」にあった“ニーズを捉える力”は、すべての能力項目に共有した概念だと考え、それぞれの中の小項目の中に分散させました。
・「看護師のクリニカルラダー」の行動目標を参考に、訪問看護の実践場面を想定して、細かく行動目標を作成しました。
・小項目の項目には、訪問看護の業務から、姿勢や態度に至るまで幅広く抽出しました。
▼おわりに
訪問看護師と一言に言っても、その定義は組織によって異なります。人材成長モデルの開発により、求めるレベルごとの実践能力が言語化され、成長のステップが明確になります。
スタッフ自らが人材成長モデルをもとに目標を設定し、主体的に学習や経験を積めるようになること、人材成長モデルの段階に応じた教育提供体制の構築に取り組むこと、その成長に見合った評価と処遇をすることで、良い循環が生まれます。
ICT活用や質評価など、様々な取り組みがありますが、最も重要なことは、人材成長モデルとそのための教育・評価・処遇です。モデルを作ることや運用することは、田畑を耕すように地道で大変な作業ですが、是非ともチャレンジしてください。