HbA1cの基準値とは?境界域や目標値と何が違うの?
公開日:2021/08/05 最終更新日:2023/10/17
HbA1c(ヘモグロビンエーワンシー)の共用基準範囲は「4.9%~6.0%」。
いろいろ調べていると基準範囲のほかに「正常値」や「境界域」、「目標値」などさまざまな数値と言葉が出てきますが、どのような違いがあるのかご存じでしょうか?
また、それぞれの医療機関から配布される検査の基準範囲を見比べると、施設ごとで基準値が若干異なっていることはご存じですか?
この記事では、HbA1cの基準値や境界域などの言葉の解釈について説明していきます。
HbA1cとは
HbA1cとは、過去約1~2カ月の平均的な血糖値を表す検査項目です。
現在の状態を確認したいときは「血糖値(グルコース)」という項目を確認してみてください。
でもなぜ「今」ではなく、「過去」の状態を調べるのでしょうか。
血糖値は、採血日当日の食事の内容や運動量、ストレスなどの生理的変動に影響を受けやすいと言われています。
対してHbA1cは、過去の血糖値の平均を表しているため、採血日当日の食事内容や運動量、ストレスなどの生理的変動を受けにくいのです。
例えば、お医者さんに甘いお菓子の摂取を控えるように言われているにも関わらず、甘いお菓子を食べる血糖値の高い人がいたとします。
この人が普段通りの食生活のままで採血したとすると、血糖値は高く報告されてお医者さんに怒られる可能性があります。
しかしこの人が良い採血結果を出したくて前日に、頑張って絶食をしたとします。
なにも食べないまま翌日採血すると、血糖値は運よく基準値に入っている可能性も考えられます。
ですが、HbA1cを一緒に検査することで、お菓子を食べ続けていた過去の状態がばれてしまい、ごまかすことができずにお医者さんから注意されるのです。
普段から適切な生活習慣を身につけてHbA1cの値を管理することが大切ですが、医療機関や保健指導時にいただく資料には「境界領域」や「目標値」という言葉が並んでおり、少し分かりにくい点がありますよね。
次からはその点について解説していきましょう。
HbA1cの基準値、正常型、境界値…ってどういうこと?
まずはそれぞれの数値をまとめてみましょう。
HbA1cの基準範囲(1 | 4.9%~6.0% |
HbA1cの正常型(2 | 5.6%未満 |
HbA1cの境界型(2 | 5.6%~6.5未満 |
HbA1cの糖尿病型(2 | 6.5%以上 |
それにしてもなぜこんなにも細かく範囲がわかれているのでしょうか?
一般的に言われている「基準範囲」とは、健常者と呼ばれる人の値をもとに統計を取り算出したものになります。
一方、HbA1cや血糖値は突然高くなることはほとんどなく、多くの場合は徐々に高くなり、気づいたら病気になっていたというケースが多いです。
そのため、特定の病気なのかを判別するための基準である「臨床判断値」というものがあります。
今回の臨床判断値は、糖尿病の診断基準に含まれている言葉で「正常型・境界型・糖尿病型」が当てはまります。
定期的に検査していると病院で「糖尿病の予備軍だねぇ~」と言われるのは、基準範囲に入っているけれど、診断基準に照らし合わせると境界型に入っているということになります。
もしHbA1cの数値が「境界型」に該当している人は、糖尿病と言えるほど高い数値ではないけれど、正常の状態よりは高い状態にあるため注意が必要です。
また、糖尿病型に入っている人は、できるだけ早めに医療機関を受診していただくことをお勧めいたします。
境界型はまだ病気ではないものの、いつ何が起きるかわからないため食生活や運動習慣などの生活習慣の見直しがとても重要になってくるのです。
でも、境界型や糖尿病型で診断ってつけられないのか?と思われる方もいるかと思うので診断がどのような流れで決まるのか次項で説明していきます。
HbA1cの基準値で糖尿病ってわかるの?
結論から言えば、HbA1cの項目だけでは糖尿病とはわかりません。
日本糖尿病学会より、糖尿病と診断するための手順や基準(2があります。
医師がその基準に沿って問診や採血、尿検査などを実施します。
検査結果をもとに総合評価したうえで、糖尿病として診断されます。
最近は「検体測定室」呼ばれる街中で血液検査ができる場所があります。
ただし検体測定室という施設で測定した結果をご自身で診断基準に当てはめるのは、とても危険です。
問診やほかの検査を行うと、糖尿病とは別の病気の可能性があります。
必ず結果は自己判断せずに、かかりつけ医や内科などの医療機関でご相談ください。
基準値より高かったら?低かったら?
まずは医療機関に受診をして精密検査をしましょう!
血液中の糖が本当に高いのであれば、生活習慣の改善に取り組んでみましょう!
HbA1cが高いということは、体内に糖が多かったり、赤血球の寿命が伸びていたり…体内に何か異常が起きている可能性があります。
まずはその原因をしっかり、かかりつけ医や医療機関で診てもらいましょう。
適切な治療を受ければ改善することもあります。
それでも本当に血糖値のような血液中の糖が本当に高いのであれば、生活習慣を見直してみませんか?
糖と言えば、普段の食事を見直して見てください。
甘いものを食べ過ぎていないか、炭水化物を食べ過ぎていないか、野菜はしっかり取っているか…などを重点に考えてみましょう。
また、運動習慣が無い方はこれを機に始めてみましょう。エネルギーとして糖を消費してみましょう。
またHbA1cが低すぎる方も中にはいらっしゃるかもしれません。
血糖値の平均的な状態を表しているHbA1cなので、慢性的に低血糖状態のこともあるかもしれません。また、貧血の治療中や大量出血した後など、新しい赤血球が多く体内に存在していることもあります。
低かったらからよかった。なんてこともなく、大きな病気が隠れていることもあります。
ぜひ早めに医療機関受診をしてみてください。
HbA1cの基準値まとめ
- HbA1cは検査前1~2カ月間の平均的な血糖値を表す検査項目
- 基準範囲とは、健常者の結果から統計を取った範囲
- 基準範囲と別に、糖尿病診断のために使われる範囲もある
- HbA1cの1項目だけでは、糖尿病とはわからない
- HbA1cが高かったり、低かったりしたら必ず医療機関を受診するようにしましょう
参考文献
1)日本臨床検査標準協議会 標準範囲共用化委員会「日本における主要な臨床検査項目の共用基準範囲」
2)日本糖尿病学会学会誌第55巻第7号「糖尿病の分類と診断基準に関する委員会報告(国際標準化対応版)」
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