尿検査で何が分かるの?
公開日:2022/06/10 最終更新日:2023/10/18
こんにちは。この記事はケアプロ予防医療事業部の看護師スタッフが監修しています。
突然ですが質問です。
あなたはこれまで、ご自身の尿についてどれだけの興味と関心を払ってきましたか?
この記事を開いてくださっているということは、「尿検査」というものについて調べていらっしゃるのだと思います。
でも物心がついてから今の今まで、「尿はトイレで排泄して流すいらないものだ。」と思ってきたのではないでしょうか?
実は、尿とは健康と密接に結びついているもので、
- ・尿の色
- ・尿の量
- ・尿のにおい
などで自身の健康状態を教えてくれます。
具体的には、正常な尿の色は透明な淡黄〜黄色、排泄直後はわずかにしかにおいません。
こうした尿はしばらく放っておくとアンモニアの影響でにおいは強くなります。
また量は人によって様々ですが、800〜1500ml/日が平均と言われています。
一方で、
- ・赤色が混じる
- ・ほとんど無色
- ・また褐色になるほど色が濃い
- ・量が異様に少ない、多い
- ・出した直後から臭い、甘い香りがする
などの異常があると、さまざまな病気の可能性のサインになります。
いわば、尿は健康のリトマス試験紙のようなものなのです。
しかし、尿がその本当の真価を発揮するのは、日々のトイレでの色・におい・量のチェックではありません。
尿には実にたくさんの目に見えない情報がふくまれています。
その情報を解き明かしてこそ、あなたの本当の体の状態が分かってきます。
そして、その方法こそ、健康診断の項目である「尿検査」なのです。
今回の記事では、この尿検査ができることや注意することなどを徹底的に解説いたしました。
ぜひ最後までお読みいただいて、あなたの今後の健康維持のためにお役立ていただけますと幸いです。
1. 尿検査で気を付けること
1-1. 検査前日~当日
1-2. 中間尿が良い理由
1-3. ベストな採尿タイミングはいつ?
1-4. 女性向け:生理の時に尿検査がある場合
1-5. 医師へウソはつかない!
2. 主に予防できる病気
2-1.①尿路感染症
2-2.②急性糸球体腎炎
2-3.③糖尿病と腎障害
3.尿検査項目のまとめ
3-1.①タンパク質
3-2.②ブドウ糖
3-3.③潜血
3-4.④白血球
3-5.⑤ケトン体
3-6.⑥ウロビリノーゲン
3-7.⑦ビリルビン
3-8.⑧PH
3-9.⑨比重
3-10.⑩亜硝酸塩
4.尿検査と尿沈渣の違い
4-1.尿検査とは
4-2.尿沈渣とは
5.尿沈渣の項目まとめ
5-1.①赤血球
5-2.②白血球
5-3.③尿路上皮細胞
5-4.④円柱類
5-5.⑤結晶・塩類
5-6.⑥微生物・寄生虫類
6.尿検査の見方・まとめ
尿検査で気を付けること
すでに尿検査を受けたことがある方はお分かりかと思いますが、健康診断前日~当日は、食事・飲水制限などがあります。
空腹のまま健診が終わるまで過ごすのは、なかなか大変なものですよね。
しかし、せっかく受ける検査です。
ご自身の身体の状態をより正確に知る機会にしていきましょう。
ではまず、尿検査で注意すべきこととは何でしょうか。
検査前日~当日
尿検査に関しては、食事や飲み物はおおむね自由に摂っても良いとされています。
一つ気を付けるべきことは、検査前日夜や当日朝にかけてビタミン剤やビタミンCを多く含むものを摂ることは避けるということです※1。
実は水に溶けるタイプのビタミンは、身体に吸収されなかった分は尿にとけて排泄されます。
ビタミン剤を飲んだ後に、尿が黄色くなる、または独特なにおいがしたことはないでしょうか。
あの色やにおいはビタミンBによるものですが、ビタミンCも同様に尿に排出されていると考えると分かりやすいかと思います。
ビタミンCには還元作用があるため、尿中に排出される他の物質を還元し、正確な数値が出ない可能性があります。
※還元=酸化とは逆の化学反応。物質から酸素を失われること。
それではどの程度の摂取量であれば影響がないのでしょうか?
結論から申し上げますと、普段の食生活であれば特に気にすることはないかと思います。
厚生労働省から推奨される一日のビタミンC摂取量は成人で100mgです。
これ以上の量を日常生活での食事で摂取することはなかなか難しいため、普段の食事をしても尿検査の結果にはほとんど問題はありません。
ただ、ビタミンCのサプリメント等を日常的に摂取している方やビタミンCを含む風邪薬など内服されている方は、一日に1000mg以上摂取している可能性も高いです。
その場合、尿検査の前に主治医や検査機関へ相談されることをおすすめいたします。
中間尿が良い理由
尿検査の際に「中間尿をとって提出してください」と説明を受けることがほとんどだと思います。
「中間尿」とは何でしょうか。なぜ「中間尿」なのでしょうか。
尿ができて排出する過程を見ていくと、その理由がよく分かります。
通常、膀胱はばい菌がいない状態です。
尿中にはばい菌がいなくても、尿が出る出口周辺にばい菌がいることで、尿の出始めにばい菌が入っていることがあります。
そのため、ばい菌が入る可能性のある出始めの尿ではなく、中間に出ているきれいな尿(中間尿)で検査していくのです。
具体的には、トイレで尿の出始めは流してしまい、途中から採尿カップ等に尿を入れます。これで中間尿の採取は完了です。
ベストな採尿タイミングはいつ?
また、悩んでしまいそうなのが採尿のタイミングです。
前日に採っていいのか、当日の朝がいいのか、検査が午後の時はどうしたらいいのかなど迷ったことがあるかもしれません。
実は検査時間によって採るタイミングは異なります。
尿は放置しておくと細菌が繁殖したり、溶けている物質が変化したりするので、採尿はなるべく直前がよいとされています。検査前日に採った尿では正確な診断が出来ないため、必ず当日に採った尿を提出しましょう。
尿をとるタイミングは、
- ・午前中の健診:検査当日の朝一番の尿
- ・午後の健診:健診直前
がよいでしょう。
迷ってしまう際には、検査機関へ相談しましょう。
女性向け:生理の時に尿検査がある場合
女性は、尿検査日に生理が被ってしまう方もいるかもしれません。
検査自体はできないことはありませんが、尿に血液が混じった(尿潜血)と判定される可能性もあるため、可能であれば検査日をずらしても良いでしょう。
尿検査のみ別日で検査することもできるので、検査機関にご相談してください。
医師へウソはつかない!
尿検査に限ったことではありませんが、ご自身の身体や生活状態は正確な診断のためにはとても重要な情報です。
尿検査前の過剰なビタミン摂取で検査の値に影響が出たり、激しい運動の後は血流の変化から尿へ影響が出ることもあります。
食事は何をたべたか、運動をした直後ではないか、熱はないか、体調ですぐれない点はないかなど、医師の質問には隠さず正直に答えるのが大切です。
持病があって通院してるところならともかく、すくなくとも健康診断の問診で怒るお医者さんはいません。安心して問診を受けましょう。
主に予防できる病気
ここまで、尿検査を受けるときの注意点などを解説してきました。
でもそこまでして尿検査を受けることにどれだけの意味があるのでしょうか?
私たちが尿検査を受けて、主に発見・予防することができる病気には主に以下のようなものがあります。
- ・腎臓や膀胱、尿道など尿を作る過程で起こる病気
- ・糖尿病など内分泌の病気
他にもホルモンの影響から、ストレスや妊娠などの状態も見ることができます。
尿を作る腎臓は血管がたくさん集まった臓器なので、血液が運んでくる情報でわかることがとても多いのです。
それではここで問題です。
腎臓が悪くなると、どんな困ったことがあるのでしょうか。
腎臓には主に4つの働きがあります。
- ・血液から不要なものをろ過して尿を作る
- ・血圧をコントロールする
- ・赤血球を作るサポートをする
- ・体内環境を保つ
などの働きがあります。
腎臓が悪くなると、これらの機能が落ちてしまいます。
今回は尿検査についてのお話なので、尿検査で分かるいくつかの病気を解説しながら、腎臓の重要性をお伝えできればと思います。
①尿路感染症
急性、慢性で異なりますが、おおまかなイメージとしては膀胱炎がイメージしやすいでしょうか。
身体の外から尿の通り道を通って細菌(多くは大腸菌)が侵入し、尿道や膀胱、腎臓などの尿の通り道に感染がおこるものです。
症状としては、
- ・トイレが近くなる
- ・排尿後に痛みがある
- ・残尿感がある
- ・尿が白く濁る
などがあります。
尿検査では、尿中に白血球や細菌が見られます。感染が起きているため、細菌をやっつけようと出てきた白血球も一緒に尿中に出てきます。尿が白く濁るのはこの白血球のためです。
②急性糸球体腎炎
尿をろ過する糸球体という部分で炎症が起きていることを糸球体腎炎と言います。
喉の風邪を引いたり、皮膚に炎症ができた後などに、腎臓の糸球体で炎症が起きることで発症します。
症状としては、
- ・血尿
- ・たんぱく尿
- ・むくみ
- ・高血圧
などの症状があります。
腎臓は血管の集まりであるため、炎症がひどくなれば血管修復が難しくなり、治療が遅れることで腎機能障害が残る可能性もあります。
尿検査で異常値が出たら、精査を行うようにしましょう。
③糖尿病と腎障害
糖尿病に合併して腎臓機能が悪くなることで発症します。
どうして糖尿病と腎臓が関連してくるのでしょうか。
糖尿病とは、血液中に糖が多くあるために血管を傷つけてしまう病気です。
そのため、血管が多い腎臓は大きな影響を受けます。
糖尿病による腎症(糖尿病性腎症)は、症状が出てきたときにはもうかなり進行してしまっています。
尿糖で異常値になる、たんぱく尿で異常値になるなどがあれば早めに病院で精査し、腎臓が頑張りすぎて疲れてしまう前に、ちゃんといたわってあげましょう。
このほかにも、尿検査ではがんや結石なども確認することが可能です。
このように尿検査はこれだけの情報をあなたに伝えてくれます。だからこそ、ご自身の健康状態を把握するのに尿検査はとても重要なのです。
尿検査項目のまとめ
お待たせしました。今回の本題である、尿検査では何が見えるのか、その検査項目についてお伝えしていきます。
尿検査では以下の項目がわかります。それぞれの項目で何がわかるのか、簡単に解説していきましょう。
①タンパク質
基準値:(ー)陰性
通常であればタンパク質はほとんど尿に出てきません。なぜならタンパク質は粒が大きいためろ過されないからです。
しかし、腎臓の働きや尿路にトラブルが起きた時、発熱時には血管にトラブルが起きてタンパク質が血管から尿中にもれ出ます。(腎盂腎炎、ネフローゼ症候群、糸球体腎炎、膀胱炎、尿道炎など)
激しい運動時やストレス時、女性の場合は生理中などに健康の人でも異常値が出ることがあります。
異常値が出た際は、再検査をしてなぜ尿中にたんぱく質があるのか、原因を判別する必要があります。
②ブドウ糖
基準値:(ー)陰性
通常であれば糖は腎臓にて再吸収されます。
しかし、血液中に再吸収できないほどたくさんの糖がある場合や腎臓で再吸収できない時に尿中に出てきます。(糖尿病、甲状腺機能亢進症など)
ストレスや妊娠などでも尿糖が出ることがあるので、陽性の場合は再検査に加え、血糖値測定などで糖尿病かどうか判別をする必要があります。
③潜血
基準値:(ー)陰性
陽性の場合、腎臓や膀胱など尿の通り道で炎症または出血が起こっている可能性があります。
尿潜血は試験紙を尿につけて、尿中のヘモグロビン(赤血球に含まれている一部の成分)との反応を見る簡易的な検査です。
そのため、赤血球そのものがなくても陽性になったり、筋肉に含まれるミオグロビンにも反応し、筋肉の病気でも陽性となることがあります。
その他、女性は生理中でも月経血に反応して陽性となることがあります。生理中の尿検査はなるべく避けたほうが良いかもしれません。
血尿を確定診断するには、後に書かれている「尿沈渣」という検査で、尿中に赤血球がいることを顕微鏡で目で見て確認します。
そのため尿潜血陽性となった場合は、確定診断のために尿沈渣を行うことになります。
④白血球
基準値:(ー)陰性
白血球が陽性だと、腎臓や尿路などどこかで炎症が起きている可能性があります。
身体の中の細菌や異物を取り除くおそうじ担当である白血球は、炎症が起きている部分に集まってきます。これがのちにいわゆる膿となるのです。
尿中でも同じことが起きるため、白血球が多くいる尿は白く濁ることがあります。
炎症がおきていても、特に自覚症状がないことが多いですが、放っておくと膀胱炎や腎盂腎炎などにつながる可能性もあるため、病院で詳しく検査をお勧めします。
健康な方でも検尿の際に出始めの尿をとると、異常になることもあります。
そのため正確な検査をするためには、先ほどお伝えしたように”中間尿”をとることが大切になってきます。
⑤ケトン体
基準値:(ー)陰性
この項目では、身体の栄養状態がわかります。
通常、人はブドウ糖をエネルギー源として活用しています。
しかしブドウ糖の不足(嘔吐、下痢、ダイエットによる飢餓など)やブドウ糖をうまく取り込めていないこと(高血糖状態など)でブドウ糖をエネルギーとして十分に使えないと、代わりに脂質でエネルギーを作り出します。
脂質を使った代謝物(ゴミ)がケトン体となり、新たなエネルギーとして利用されるか尿に溶けて身体の外に捨てられます。
近年注目されている「ケトジェニックダイエット」もこのような原理です。
ただし、ケトン体が増えることで問題であることとそうでないことがありますが、まだ詳しく解明されていないことが現状です。無理な食事制限は行わず、行う場合にはプロの指導の下行うようにしましょう。
尿検査で異常値が出た場合は、原因を特定するために早めに再検査あるいは精査を行いましょう。
⑥ウロビリノーゲン
基準値:(±)または正常
異常値の場合、肝臓でトラブルが起きている可能性があります。
ウロビリノーゲンとは、赤血球が寿命を迎えて捨てられる際に出てくるものが変化したものです。
赤血球は古くなると肝臓で壊されます。その際に出たグロビンが変化してビリルビンとなります。胆汁として排出されるビリルビンが腸内でさらに変化したものがウロビリノーゲンです。
ウロビリノーゲンの一部は腸管から吸収され肝臓でビリルビンに戻るものもありますが、戻らなかった一部は腎臓から尿中に排泄されます。
健康な人の尿にも、ウロビリノーゲンは少量排出されるため、正常値は±となります。
肝臓の機能が低下したり、溶血性貧血、便秘などで尿中に多く出てきます。胆道閉鎖などが起きると数値は低下します。
※溶血性貧血=赤血球が破壊されることによっておこる貧血の一種
そのため、多すぎたり少なすぎるなどの異常値が出たら原因を詳しく調べる必要があります。
⑦ビリルビン
基準値:(ー)陰性
異常値の場合は、急性肝炎や胆道閉鎖などの疾患が疑われます。
前項目のウロビリノーゲンで解説したように、通常はビリルビンは肝臓から胆汁に排泄されるため、尿に出てくることはありません。
しかし肝臓や胆道トラブルにより胆汁の流れが妨げられると、ビリルビンが血液中に増加して尿に排泄されることもあります。
⑧PH
基準値:pH4.8~7.5
尿を試験紙につけて、尿が酸性かアルカリ性かを見る検査です。
腎臓には血液を弱アルカリ性に保つ働きがありますが、その働きが正常かを見ています。血液のpHが傾くと、呼吸や代謝によっても調整しようとするため、呼吸の影響や食事の影響も受けやすい項目です。
尿pHに異常があると結石が出来やすい状態になり、また痛風や糖尿病、尿路感染などのリスクの発見にもなります。
しかし先ほどお伝えしたように、尿pHは食べ物の影響を受けやすく、食生活の乱れでも異常値がでることがあります。
手軽にできる反面、食事や生活状況の影響を受けやすいため、その他の検査結果と照らし合わせて判断していきます。
⑨比重
基準値:比重1.010~1.030
尿に溶けている物質の割合を見ています。
コップに入れたお水の中に醤油をそっと垂らすと、お醤油が底に沈むのはイメージできるでしょうか。これは醤油の中に塩分などの他の物質が溶けているために水よりも重く、沈んでしまう現象です。
腎臓は身体の状況に応じて薄い尿を作ったり、濃い尿を作ったりして体内の水分量を保っています。
尿は様々な物質が溶けているため、水よりもわずかに比重は大きいのが正常です。
しかし、腎臓の働きが障害されたり、尿を出すホルモンの異常があると、この調整がつかず異常値が出ます。
尿比重が高い場合は、糖尿病やネフローゼ症候群、脱水症などの可能性があり、低い場合は腎不全、尿崩症などが疑われます。
⑩亜硝酸塩
基準値:(ー)陰性
尿中に細菌がいるかどうかを調べる簡易的な検査となります。
食事の代謝によって硝酸塩が出てきますが、その多くは腎臓から硝酸塩として身体の外に捨てられます。
しかし、膀胱炎のように尿中に細菌がいる際には、細菌が硝酸塩を亜硝酸塩に変化させてしまいます。そのため、尿中から亜硝酸塩が検出されると細菌がいる可能性(尿路感染の可能性)があるということがわかります。
ただしすべての細菌が亜硝酸塩に変えられるわけでもなく、亜硝酸塩に作り変えるのに時間もかかります。
そのため、例えば膀胱炎で頻尿になっていると尿が膀胱内にいる時間が短くなってしまい、検出されないこともあります。
また健康な人の尿でも長時間放置していると細菌が繁殖して検出される場合があります。
そのため、尿検査単体ではなく、総合的な判断が必要になります。異常値が出た際には精査を受けるようにしましょう。
尿検査と尿沈渣の違い
ここまで、尿検査項目について紹介してきました。
このように、尿を調べるだけでもたくさんの情報がわかるのです。
さらにここからは、せっかくですのでさらに尿成分を詳しく調べることのできる「尿沈渣」という項目についてご紹介しましょう。
まずは尿検査と尿沈渣の違いについてみていきましょう。
尿検査とは
尿に溶けている成分を調べています。
試験紙を浸すだけで反応が出るため、比較的簡単ではやく結果が出ます。
尿沈渣とは
尿を遠心分離器にかけます。
沈殿物(細胞や結晶、細菌など)を実際に顕微鏡で見て結果を出します。
尿沈査は、尿に入っている細胞などを実際に目で見て観察するので、信頼性が高いです。
例えば、試験紙で潜血陽性でも血尿とは限りません。
どうしてでしょうか?
尿潜血の試験紙は、血液中のヘモグロビンや筋肉のミオグロビンに反応します。
そのため、溶血(赤血球が壊れてしまうこと)や筋肉の破壊(激しい運動後や筋肉の病気など)でもヘモグロビンやミオグロビンが出るため、尿潜血は陽性になることがあります。
血尿の確定診断をするには、腎臓や膀胱からの出血していること、つまり尿沈渣で赤血球細胞を顕微鏡で確認する必要があります。
同様に、膀胱炎では尿検査で白血球や亜硝酸塩反応が陽性になりますが、確定診断には尿沈渣で白血球と細菌の確認をする必要があるのです。
このように、比較的簡単で早く結果の出る尿検査で全体的にみて、何か異常があれば尿沈渣で確認するような使われ方がされます。
尿沈渣の項目まとめ
「尿沈渣」の検査で見ることできるポイントについてはお分かり頂けたでしょうか。
ここでは尿沈渣でわかる検査項目についてご紹介していきます。
尿沈渣は遠心分離器にかけて、沈殿物を顕微鏡で観察し、細胞の数などを数える検査だと先ほどお伝えしました。
では具体的に、沈殿物にはどのようなものが含まれているのでしょうか。
①赤血球
腎臓から尿道までの尿の通り道を尿路と言いますが、赤血球が観察されたということは尿路からの出血があるということです。
赤血球の形によってもどこからの出血なのか予想できます。
変形があれば腎臓からの出血、変形がなければ腎臓以外からの出血の疑いがあります。
②白血球
尿に白血球があるということは、尿路に何らかの炎症や感染を疑います。
③尿路上皮細胞
尿管、膀胱、尿道の尿が通る道の内面を覆っている細胞を尿路上皮細胞と言います。
これが観察されるとこの通り道に炎症や結石などの疑いがあります。
④円柱類
円柱細胞とは、尿中にあるタンパク質が尿管を通る時に、尿管の形に筒状に固まったものです。
タンパク質が多い尿や脱水の際につくられやすくなります。そのため、腎臓に病気がある方だけでなく、健康な人でもたくさん汗をかいたときに出ることがあります。
もし、この円柱に赤血球が含まれていた際は、円柱が出来たところ(腎臓内)に赤血球がいたということを意味します。
つまり、腎臓が悪い状態での出血だと円柱に赤血球が含まれるということです。膀胱など腎臓以外の場所からの出血では円柱細胞に赤血球は含まれません。
⑤結晶・塩類
結晶とは分子などが規則的に並んだ個体のことを言います。身近な結晶は料理に使う塩などがありますね。
ここで粒の荒い塩を想像してみてください。粒が荒い塩でも、ある一定の量まではお水に溶けますよね。しかし、溶けきれなくなれば粒のまま残ってしまいます。
同じように尿の成分でも、だんだんと濃度が濃くなると溶けきれなくなり、結晶として出てくることがあります。
尿路結石などという言葉は聞いたことはあるでしょうか。
尿中に含まれるカルシウム、シュウ酸、リン酸、マグネシウムなどの成分が結晶化すると結石となります。
尿路感染、代謝異常、ホルモン、薬などの影響を受けて結石となることがありますが、結石ができるほとんどは原因不明と言われています。
⑥微生物・寄生虫類
尿中に原因微生物が見られるということは尿路感染を起こしているということです。
細菌の場合は、細菌の種類を特定するために培養検査を行います。ウイルスの場合はPCR法で特定する場合があります。
尿検査の見方・まとめ
これまで尿検査について詳しく解説してきましたが、いかがでしたでしょうか。
人間の体の仕組みはよくできているなと思いますよね。
尿検査は、採血や胃カメラのような痛みもなく、比較的簡単に出来る検査です。
それにもかかわらず尿には様々な情報があり、尿検査は今の身体の状態を教えてくれます。
尿を作っている腎臓は、急激に悪くなる病気と徐々に悪くなる病気があります。
症状が出て、すぐ治療できれば改善する可能性もありますが、症状がなく、かなり悪化してから受診すると治療が出来ず、改善しない可能性が高くなります。
そのため、健康診断では毎回尿検査を行い、早期発見・早期治療につなげられるようになっています。
これまでお話してきたように、病気の状態やリスクを教えてくれることもあれば健康な人でも異常値が出ることもあります。大事なのは、なぜ異常値が出たのかと原因を探すことです。
尿検査だけでは確定診断はできないので、異常値が出た際は、病院で精査することをお勧めします。
すべて正常であった場合は、この身体の状態を継続するためにはどのような食事や生活習慣を送るかなど、考えるきっかけにしていただければと思います。
参考文献
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