代表川添高志より

代表メッセージ

2007年12月12日にたった1人で始まったケアプロは、様々な方々のご支援を受けながら、予防医療事業と在宅医療事業を中心に活動を広げてまいりました。2017年は節目となる創業10年目を迎え、これからも皆さまの応援を力に変えながら、革新的なヘルスケアサービスをプロデュースし、健康的な社会作りに貢献していきたいと思います。

高校時代に、高騰する医療費や超高齢多死社会の中で、「キュア」には限界があり、疾病予防や健康増進、障がいや病気があっても、その人らしく生きていくことを支える「ケア」を中心としたヘルスケアシステムを再構築していくべく、看護師で起業することを志しました。

慶応義塾大学看護医療学部に入学した後、足を切断する糖尿病患者と出会い、予防医療が十分行き届いていない日本の現状に強い問題意識を持つようになりました。また、米国研修では、医師なしでスーパーマーケットの中で検査やワクチン接種などを行うリテイルクリニックの業態を知りました。その後、東京大学医学部付属病院で、看護師として勤務する中で、「自己採血」は医療行為ではないことに着目し、「ワンコイン健診(現セルフ健康チェック)」を構想しました。

弊社が設立された2007年は、自己採血による簡易検査の法的位置づけが不明瞭であり、2008年11月に日本初のワンコイン健診ショップ開設後は、その事業の運営や展開に様々な困難を伴いました。しかし、政財界へのアドボカシーを続けた結果、自己採血簡易検査の規制改革を実現することができました。

加えて、2011年に東日本大震災の支援活動では孤立死の問題に直面したことをきっかけに、2012年より訪問看護を開始しました。絶対的な訪問看護師数の不足を解決するために、これまでは難しいとされてきた「新卒訪問看護師」の採用と育成が可能な体制作りを図ることで、訪問看護業界を質的・量的に変えていく取り組みを、聖路加国際大学や全国訪問看護事業協会とともに展開しています。

我が国には憲法があり、誰もが健康に生きる権利が謳われています。これからも誰もがあたりまえに健康になれる社会の実現に向けて全力を尽くしていきます。

予防・創業のストーリー

高校のときに起業を決意

高校1年の時に父がリストラに遭い、大企業に勤めることが成功だというイメージが崩れて、自分で仕事を創り出そう、いつか起業しようと考えるようになりました。医療に関心を持ったのは、中学2年と高校2年の時に祖父を亡くし、家族としてその場に立ち会った影響が大きかったと思います。

高校3年の時には、母が介護の仕事をしていた老人ホームで夏休みにボランティアをして、そこでの体験が医療と経営の問題を考えるきっかけになりました。その老人ホームの運営はかなり厳しく、20人の利用者を2人の職員で入浴させなくてはならないような状況で、利用者にも職員にも大きな負荷がかかっていました。これはまずい、経営の問題がサービスに直結して大きな影響力を持っている、ということを実感しました。逆に言えば、経営を改善すればサービスの質も上げられるのではないかと考えて、大学では医療と経営の関係を学ぼうと、慶應義塾大学の看護医療学部に進みました。

米国で見たナース・プラクティショナー

大学では医療と経営の関係について、病院や老人ホームなどを回りながら学び、3年の時にアメリカのMayo Clinicという病院に視察に行く機会がありました。

その時、たまたま入った大型スーパーマーケットの店舗で「ミニッツ・クリニック」(Minutes Clinic)という簡易的な健康診断と治療を行っている場を見ました。医師が常駐するのではなく「ナース・プラクティショナー」(nurse practitioner)と呼ばれる医療行為もできる看護師の資格を持つ人が、最低限の診断と治療を、短時間で、通常の病院よりも安価に行うサービスです。

アメリカでは医療費が非常に高く、病院に行くことを避ける人も無保険者も多いですから、「病院に行くほどではないが、ちょっと診てもらいたい」というニーズを捉えた事業です。これは面白い、と思って、そういうことが日本でもできないかと考えるようになりました。

起業に向けた準備

大学時代から起業資金を1,000万円ため、経営コンサルティング会社で経営を学び、起業準備を進めていました。

そして、予防医療のスキルを身につけるために東京大学病院の糖尿病代謝内科病棟に勤めました。糖尿病患者さんのほとんどが、もっと早く病気が見つかっていれば重症にならなくてすんだ人でした。「なぜもっと早く健康診断を受けなかったのですか」と聞いてみたら、「その機会がなかった」「行きたくても子供がいて行けなかった」「自営業で仕事を休めない」「まさか自分が病気になるとは思わなかった」と言われました。そして、病院で働いているだけでは生活習慣病の本質的な問題解決はできないと思い、手軽な予防医療システムを開発する必要性を強く感じました。

それからは、病院で患者さんたちに、どういう機会があれば受けたか、聞きました。「もっと簡単に健診を受けられる場があったら、自分もこうはならなかったのに」とおっしゃる患者さんもいました。

「機会がない」「時間がかかる」「お金がかかる」が健診を受けない理由

Aさん(35歳、男性、フリーター)は、入院した次の日に、糖尿病合併症で壊疽(えそ)した足を切断しなければなりませんでした。Aさんは会社では健康診断の機会がなく、長い間健康診断を受けていなかったのです。その後Aさんは糖尿病がさらに進行して血液透析を週3回受けるようになり、仕事ができなくなり、生活保護を受けるようになりました。年間600万円の医療費は、全て税金で支払われることになりました。生活習慣病は、患者さんの人生だけでなく、社会コストとしても大きな影響を及ぼします。

Aさんが健診を受けていれば、糖尿病を未然に防げたかもしれません。食べるものも着るものも困らない日本において、どうして健診を受けていない人がこんなにも多いのだろうか?その疑問からマーケティング調査を行い、健診を受けない理由として、「機会がない」「時間がかかる」「お金がかかる」ことを突き止めました。

そして、これを打開する策として思いついたのが、1項目500円で受けられる「ワンコイン健診」でした。自己採血であれば、医療行為にあたらないことがわかり、自己採血で血糖値や総コレステロール、中性脂肪などが測定できるワンコイン健診を構想しました。そして病院の患者さんたちに「ワンコイン健診」を開発することを約束して病院を退職し、2007年12月にケアプロ株式会社を設立しました。

※ワンコイン健診は、現在、セルフ健康チェックという名称に統一しています。

「健診弱者」3600万人を救うために

過去1年以上健康診断を受けていない「健診弱者」は、全国に約3600万人。そんな健診弱者に向けたサービスをどこでやるか。

東京都中野区は日本一人口密度が高い区であり、しかも20代30代の男性フリーターが多い場所です。また商店街に活気があり主婦や自営業者が多く、ケアプロのターゲットが密集しており、中野に決めました。しかも、中野ブロードウェイという商業施設はオタクショップが軒を連ねており、全国から集まるオタクのフリーターの方にも利用して頂けるのではないかと考え、ここに店舗を構えることを決めました。

07年12月に起業し、08年11月に中野店を開店させましたから、約1年間の準備期間を経たことになります。そして2018年7月に中野店を閉店することになり、事業展開は出張サービスが中心へと変わっていきました。

血糖値、中性脂肪などが各500円で

メニューは、血糖値、中性脂肪、肺年齢、骨密度など、1項目500円から検査することができ、結果はその場で、数分でわかります。また、保険証や予約は不要で、誰でも気軽に安価な値段で受けることができます。

はじめはお客さんが来なかったのですが、駅前でチラシ配りをしたり、近隣のお店などに挨拶回りをしたり、マスコミにプレスリリースをして、テレビや新聞などで取り上げてもらうことで、多くの方々が来店されるようになりました。利用者からは「自分で調べたいメニューを選べて便利」「こんな簡単に結果が出るなんてビックリ!」「500円から受けられるから手軽」と、驚きの言葉が上がっています。

利用者の多くは、健診を1年以上受けていない方です。たとえば、子育て中で健診に行けなかった主婦、平日は仕事から抜けられず休日にしか時間が取れない自営業者、月給10万円未満で健診を受けるお金がないフリーター、保険証を持っていない外国人などです。健診結果は標準値と、要注意、要受診の3段階に分かれていて、利用者の約3割が「要注意」「要受診」と判定されています。「自覚症状がなく、こんなに悪いとは思わなかった」「やっぱり糖尿病だったか。すぐに病院に行きます」「早く気がついてよかった」といった声が聞かれます。

ケアプロでは、中野以外にも関東を中心に、仕事帰りや買い物の途中で気軽に立ち寄ることができるさまざまな場所で、ワンコイン健診の出張サービスを行っています。利用者層は場所によって異なり、ショッピングセンターでは主婦が多く、パチンコ店でフリーターや自営業者が多く、エキナカでは会社員が多いといった具合です。

2018年3月現在で、利用者数は延45万人を超えました。

ケアプロを応援してくれる人

ショッピングセンター、競輪場、パチンコ店、温浴施設、フィットネスクラブ、ドラッグストア、保険ショップなどから、イベントに来て欲しいというご依頼も増え、お客様サービスや地域貢献になっています。特にパチンコ店は、ケアプロのターゲットが多く、ジュースを飲み、喫煙しながらパチンコをしている方が多く、異常値が出る割合も高いので、ケアプロの意義を実感しています。

ケアプロを利用した方が、友人を連れて来てくださることもあります。ある人は、友人が糖尿病だと思って連れてきたら、自分が糖尿病だということがわかりました。「糖尿病がわかったのは、ワンコイン健診のおかげだ」と入院先の病院でワンコイン健診のことをとても宣伝してくださって、病棟でのあだ名が「ワンコインさん」になったという方もいます。

今後の展望

保健師や看護師、臨床検査技師の方で一緒に活動をしてくれる仲間を増やしています。市民一人ひとりが、自分の生活習慣を見直し、健康維持・増進に努めることで、生活習慣病を予防していける社会を実現するために、セルフ健康チェックを普及させて、美容院に行くような感覚で、数カ月おきに定期的に健康チェックをしていただくのが理想です。

そして、医療費抑制によって社会保障制度を維持し、リスクを分散すべき難病や交通事故などにあったときに安心して医療を受けられる世の中を守っていきたいと思います。

在宅のストーリー

東日本大震災がきっかけとなった

ケアプロが訪問看護を開始するきっかけになったのは東日本大震災の被災地支援でした。

ケアプロナースは、3月下旬から宮城県石巻市の避難所を回って、感染対策や健康状態のチェック、医療機関紹介などを行っていました。避難所には、津波で薬が流された方、かかりつけの医師と連絡が取れなくなった方、家族を失って夜も眠れずに精神的に不安定な方がいました。

医療機関に通えない医療難民が多く、避難所には在宅医療が必要でした。「今日はどうですか?」と体調を尋ねながら、検温や血圧などバイタルサインのチェック、内服状況の確認、お通じの状況確認など、全身の状態に変化がないかを看ていきましたが、継続的に訪問看護が入る必要のある方が避難所に多いことがわかりました。

そこで私たちは、石巻市の訪問看護ステーションの看護師の皆さんと一緒に、「石巻地域医療復興会議」を開催して地域の訪問看護ニーズを共有し、訪問看護の導入がスムースに行なえるよう活動していきました。

被災地で活動を続けている中、「“仮設孤独死”宮城で2人」という河北新報の記事※1)を見て、息を飲みました。石巻の小学校や中学校で、独りで避難していた高齢者の方々の顔が思い浮かびました。“独りで大丈夫だろうか?”と。

孤独死を防ぐために、避難所には、保健師が巡回したり、管理人が常駐して目配りはありました。しかし、その後も、誰にも看取られずに亡くなった孤独死の話を耳にすると、なんとも遣る瀬ない気持ちが込み上げていきました。

避難所生活や仮設住宅での生活が多い被災地で、在宅医療が重要でしたが、この課題は、日本全体においても大きな課題です。2020年に死亡する140万人のうち看取り場所がない「看取り難民」が約30万人と試算されているのです※2

つまり、被災地で起きていることは、超高齢化が進む、将来の日本全体の縮図なのです。私たちは、被災地の教訓から、10年後20年後の日本をこのような状態にしてはいけないと心に誓いました。

ただ、課題は大きい。

訪問看護の利用者は、2012年現在で約38万6000人。10年前の23万7000人と比べ、約15万人増えています。一方で、訪問看護ステーションで働く看護師は、2010年で約3万人で、10年前と比べ約4000人程度しか増えていません。

この数字を見た時に、本当にマズイっ!と思いました。
「訪問看護が全然足りない。」

私たちは看護師としてどうしたら良いのか、悩んだ末、答えは一つでした。

「ケアプロが訪問看護ステーションを立ち上げよう。」

さっそく、24時間365日対応の「ケアプロ訪問看護ステーション東京」を立ち上げることを決意し、2012年12月1日から立ち上げ準備に取りかかりました。

(脚注)
※1)2011年7月16日付「河北新報」より
※2)「我が国医療についての基本資料 中央社会保障医療協議会」(H23)より

訪問看護を待つ人が50万人!?

私は大学1年生の時に、訪問看護のパイオニアである村松静子さんのお話を伺ってから訪問看護に関心を持っていました。そのため、「ワンコイン健診」を立ち上げながら、全国訪問看護事業協会の職員を兼務し、訪問看護ステーションの必要数や利用者数の研究に関わりました

それが3.11の4年前です。

当時、全国訪問看護事業協会として厚生労働省の審議会への提案の中で、平成27年には、訪問看護の利用者を90万人、訪問看護師を9万人という目標を掲げていました※。 数年が経過してその目標に近づいているかと思っていましたが、以前と殆ど変わらず、現在の利用者は40万人、訪問看護師は3万人。あと3年後には利用者90万人という目標でしたので、現状とは50万人もギャップがあり、大きな危機感を抱きました。

※引用文献:「社会保障審議会介護給付費分科会 介護サービスの把握のためのワーキングチームにおける事業者等団体ヒアリング資料 訪問看護ステーションの現状と今後の展望について(平成19年11月13日 社団法人 全国訪問看護事業協会)」

夜間や土日対応のは1割しかない

また、訪問看護ステーションの絶対数が足りないだけでなく、「夜間や土日祝日に対応できるステーション」が全体の1割程度しかないこともわかりました。

被災地から帰って、訪問看護ステーションの方々に話を伺いに行くと、「看護師が不足していて、訪問看護の受け入れを断らなければいけないことがある」 「働いている看護師は主婦が多く、夜勤や土日祝日の勤務が難しい」「訪問看護の24時間365日対応は難しく、人工呼吸器がついている方やがん、難病の方など医療依存度が高い方をお断りしなければいけないこともある」と。

この話を聞いて私は、在宅で安心して療養生活を送り、看取られる環境が十分に整っていないと察しました。

一方で病院の看護部長や地域医療連携室のソーシャルワーカーの方々からは「在宅で最期を看てもらいたいという患者さんは多いけど、受け入れてくれる訪問看護ステーションを探すのが大変」「今後、さらに高齢者が増えるので、訪問看護が増えてくれないと・・」「例えば小児の場合は××地域に訪問看護ステーションがなくて困っている」など。どれも切実な叫びでした。

ヨスさんとの出会いで明るい兆しが

しかし、ケアーズ白十字訪問看護ステーションの秋山さんに紹介された、オランダ人看護師のヨスさんとの出会いで明るい兆しが見えました。 オランダには日本の訪問看護ステーションとはまったくスケールの違うモデルがあったからです。

ヨスさんら看護師が2006年に起業し、翌年1月に4人で始まったBuurtzorgは、その後急速に拡大。2012年12月時点で、九州ほどの広さのオランダ全土で約500チームが各チーム10人体制で、看護師や介護士が約5000人で運営しています。 管理部門は約30人、間接費は8%と他の在宅ケア組織の平均25%を大きく下回ります。利用者は約5万人。

現在、オランダのすべての産業を通じて最も成長している事業者といわれています。

どのような仕組みが必要か

地方と都会の課題がありますが、高齢者や看取り難民の4割が集中するのは、東京、神奈川、千葉、埼玉、愛知、大阪です。そのため、大都市圏に位置するケアプロは大都市圏でこれからの時代に必要な訪問看護ステーションのモデル確立とその普及をどのようにしていくのか考えました。

その結果、2つのポイントがあることがわかりました。

1つめは、新卒・新人看護師向けの「卒後訪問看護研修プログラム」を作ること。
2つめは、事業所の規模を「看護師30人チーム」を基本とすること。

今まで新卒や新人の看護師が訪問看護をすることは無理だと言われていました。しかし、土日や夜間も運営するためには、独身で体力のある若手の看護師がチームの中に一定数は必要です。

大学病院なども若手がいなければ、24時間365日対応はできません。しかし、訪問看護ステーションの多くは、平均年齢が50台前後です。ただ、新卒看護師などの新人看護師はベテラン看護師と違って経験は浅いため、「知識」、「技術」、「コミュニケーション力」、「判断力」などをしっかり教育するプログラムが必要です。

また、事業所規模が「5人未満の小規模」の訪問看護ステーションが全国平均61%で、規模が小さいほど赤字傾向が強く、夜間対応が困難で、事務員を雇用できないため看護師が何でもやらなければなりません。そのため、看護師一人一人の夜間対応の負担を軽減し、経営を安定させるために、看護師30人で1チームを基本とすることが重要です。

ただ、1つの事業所を30人としても1年間に看取ることが出来るのは、多くても600人と考えると、看取り難民30万人を救うためには、単純計算でも30万人÷600人/チーム=500チームを日本全国に展開していく必要があります。

新卒や臨床経験が数年の新人でも、訪問看護をやりたい看護師はたくさんいるはずです。彼らを訪問看護業界に流入させ、しっかり教育することで24時間365日体制を実現し、30人チームで経営を安定化させ、そのモデルを普及させていくことで、訪問看護の供給体制システムを変革し、看取り難民を一人でも救っていきたい。

ゼロから訪問看護を立ち上げる

私たちはとうとう、ゼロから訪問看護ステーションを立ち上げることを決めました。そこで、まずは、大先輩の訪問看護ステーションで現場研修をさせていただいたものの、手探りの中でのスタートでした。

そして今、ケアプロが立ち上げた訪問看護ステーションの看護師は、次のような日々を送っています。

朝8時半に出社して、更衣や訪問バックなどを準備し、午前に2件訪問し、昼食をとって、午後に3件訪問。17時にオフィスに戻ると、主治医やケアマネジャーに報告や相談。「Aさんは、心不全の疑いで入院になった」「Bさんは、腹水が溜まっても痛い治療(穿刺)はしたくないということ」「Cさんは、次回は家族と看取りの時期や準備についてお話します」――などの会話があります。

そして、計画された訪問以外に緊急対応も。

例えば、下肢の蜂窩織炎(足の炎症)で傷の処置を目的として訪問していた方がいました。 その方は、糖尿病や心臓病の持病がありましたが、朝方具合が悪いと電話があったため緊急訪問。しかし、家のドアの鍵が開いておらず声をかけても返事がないため、窓から侵入。すると、利用者が口から泡を吹いて意識が朦朧としており、すぐに救急搬送し、一命をとりとめました。

当番の看護師は夜間に備えて携帯電話を持って帰り、必要時は夜間も出動。

事例:ケアプロが対応している事例の数々

1. パーキンソン病の永六輔さん
「病気を抱えての放送はとても疲れます。リハビリで健康管理につとめています。」
2016年7月7日:お亡くなりになられました。謹んでご冥福をお祈り申し上げます。

2. 頸髄損傷で四肢麻痺の吉田真一さん
「日中は仕事なので、夜間訪問してくれて助かる。24時間365日対応して頂ける所があって初めて、本当の意味で障碍者の自立と社会参加が可能になる。その意味で、ケアプロは砂漠のオアシスである」と仰って頂けました。

現在、吉田さんは「世界いち気持ちいい介護」をコンセプトにした訪問介護の会社「でぃぐにてぃ」を経営されています。

3. 糖尿病で足の傷が蜂窩織炎起こしていた利用者様。

在宅医療や終末期医療はどうあるべきか

私たちは、これまで紹介させていただいた事例でも言えることですが、治療に頼るのではなく、その人らしい生活を重視した医療が大切であると考えています。

厚生労働省によると2009年の1年間で、最も多かった国内の死亡場所は医療機関で81%、自宅での死亡は12%にすぎないとされています。しかし、2008年の調査では、一般国民の63%が終末期の自宅療養を望むと回答しています。希望通り、63%の人々が自宅で、少なくとも介護施設で終末期を迎えれば、多少の介護費用の増加を見込んでも、老人医療費が大幅に減ります。

厚生労働省の発表によると、2010年度医療費総額は36兆6000億円で、前年度より1兆4000億円増加していますが、70歳以上の高齢者の医療費が16兆2000億円と大きな割合を占めています。また、統計によって異なりますが、国民一人が一生に使う医療費の約半分が、死の直前2か月に使われるという報告があります。

高齢者の医療費が高い理由は、人口呼吸器をつけたり、胃ろうをつけたりする延命治療の影響が大きいです。胃ろうは、胃に穴をあけ、そこから栄養を補給する方法で、1990年代後半から日本でも急速に広まり、2012年現在国内の患者数は40万人以上にも上ります。(胃ろうの医療費は、一人当たり月30万円程度で、約40万人いるため、月に約1200億円)。

それぞれが納得した終末期をめざして

もちろん、先端医療によって1秒でも生き続けたい人もいますが、そのことも含めて、自分が納得した終末期を送っていただきたい。

しかし、認知症や脳血管障害などで意向を確認できない意識レベルになってしまってからでは選択できないし、残された家族は本人に手厚い医療を受けさせる傾向があります。 そのため、意識のあるときに、どのような終末期医療を受けるのか、本人及び家族の意向を確認して、選択を支援することが大切です。

ケアプロの看護師も、病院から退院される方やそのご家族と終末期の医療について、急変が起きても自宅で看取るのか、それとも、病院に戻って治療をしたいのかを確認しています。 そして、急変が起きても自宅で看取る選択を実現するためにも、24時間365日対応の訪問看護が必須です。

訪問看護業界に新しい風を

こうして訪問看護ステーションの立ち上げを始めたケアプロには、安心して療養生活を送り、住み慣れた自宅での看取りを実現させることに想いを持つ看護師が集まっています。

2018年4月現在、看護師33名、理学療法士1名、居宅介護支援員2名、事務3名ですが、バックグラウンドは様々です。大学病院出身、訪問看護経験者、新卒、子育て中の主婦、研究所でダブルワークする看護師。開業希望者もおり、北海道、東北、関西、中国、四国、九州など全国から集まっています。

若いメンバーが多いですが、在宅医療の在り方を真剣に考え、若いからこそできる新しい仕組み作り(若い看護師が訪問看護に参画し、適切に教育を受けられるなど)に励んでいます。聖路加国際大学と「新卒訪問看護師」を育成するためのプログラムセミナーを開催したり、日本看護協会など業界団体の方にも応援して頂いて、新卒・新人訪問看護師応援サイトを立ち上げるなど、ケアプロで培ったノウハウを業界に情報発信しています。今後は、総合病院ならぬ総合訪問看護ステーション(仮称)を構築していく予定です。

仲間と力を合わせ前進あるのみ!

訪問看護ステーションが足りず、「どんな症状でも、いつでも、どこでも」訪問看護を利用できる環境にはなっていない日本で、今後、急増する看取り難民への対応は喫緊の社会的課題です。

世の中にあるコンビニやレストランなど様々な業種が土日や夜間に営業していますが、訪問看護ステーションの9割が土日祝日夜間は基本的に休みです。しかし、保険を利用できる医療や介護は公的サービスだからこそ、休日や夜間などをしっかり対応していくところがなくてはなりません。

そのため、ケアプロでは24時間365日サポートできる仕組みを作り、市民の方々が、住み慣れた在宅で、安心した療養生活とその人らしい看取りが実現できるようにしていきます。

まだまだ駆け出しの身ではありますが、初心を大切に、仲間と力を合わせ、前進あるのみ!

ここまでお読みいただく中で、訪問看護の必要性と今後の課題について、少しでも多くの方と想いを共有することができましたら幸いです。

今後、急増する看取り難民という社会的課題を解決するキーパーソンは間違いなく訪問看護師です。

世の中にはコンビニやレストランなど便利なサービスはありますが、訪問看護は地域で暮らす人の根幹を支える公的サービスとして、大きな社会的使命を持っています。

訪問看護の現場は楽しいだけではなく、辛いこともありますが、独り暮らしの高齢者や障がいをお持ちの方などにとって、訪問看護師の存在がどれだけありがたいことか、自宅で看取ることができた家族の支えになれることか、ということは現場の看護師冥利だと思います。

訪問看護に興味が有る方は、ぜひ、看護師人生の重要な選択肢として、チャレンジしていただければと思います!

代表プロフィール

1982年生、兵庫県生まれ、横浜市育ち。
2005年3月 慶應義塾大学看護医療学部卒業。
看護師・保健師。

大学在学中に、米国にて「Retail Clinic」の業態を知る。
経営コンサルティング会社、東京大学病院を経て、2007年12月起業。

<社会活動>
一般社団法人 日本開業保健師協会副会長
きらきら訪問ナースの会 共同代表
東京大学 非常勤講師
世界経済フォーラム(ダボス会議)グローバルシェイパー
日本在宅看護学会理事
一般社団法人日本看護管理学会 評議員

<掲載記事>
東洋経済:川添高志・ケアプロ社長–日本の健康診断費をワンコインにする男
リクルートワークス研究所:「社会リーダー」の軌跡

日テレ:Social Wennovators

受賞歴

  • ◯ 第一回日経ソーシャルイニシアチブ大賞 国内部門賞受賞
  • 日本人3人目のアショカフェローに選出(English page)
  • ◯ 世界経済フォーラム(ダボス会議)グローバルシェイパーに選出
  • ◯ 東京大学 医療政策人材養成講座 優秀成果物 特賞
  • ◯ 慶応義塾大学 SFC Entrepreneur Award 2007 The Best New Market Award
  • ◯ 第1回社会イノベーター公志園 審査員特別賞
  • ◯ 次代を創る 100 人(日経ビジネス 2011.10.31 号)に選出
  • ◯ 日本を救う中小企業 100 社(Newsweek 日本版 2011.12.07号)にケアプロが選出
  • ◯ 日本を立て直す 100 人(AERA 2012年1月2・9日合併増大号)に選出
  • ◯ CSRをビジネスで具現した日米欧 81 人(オルタナ 28号 2012.03.31発行)に選出
  • ◯ 医療の質・安全学会主催 第8回「新しい医療のかたち賞」受賞
  • ◯ 中小企業庁主催 「はばたく中小企業・小規模事業者300社」に選定
  • ◯ 株式会社オルタナ主催 第1回「グリーン・オーシャン大賞2017」優秀賞 受賞