近年、ロボット産業が注目を浴びている。そのような中、今注目されているディズニー映画「ベイマックス」を観てきた。驚いたことにベイマックスは人を看護するロボットなのだ。そこで今回はベイマックスから考察したい。
架空都市のサンフランソウキョウに住む14歳の少年ヒロ浜田は天才科学少年で、その兄タダシが開発したのが「ベイマックス」。火災事故で兄タダシが亡くなり、意気消沈していたヒロ。そんな彼の前にベイマックスが歩み寄る。雪ダルマのような形をしている。タダシの開発コンセプトは「心と体を守るケアロボット」であった。ヒロに対して「私はベイマックス。あなたの健康を守ります。」といって非接触で血圧や心拍などを測定する。そしてベイマックスの胸の部分に兄タダシの動画データを呼び起こしてヒロに見せてヒロの気持ちを穏やかにさせる。そしてヒロの健康状態がよくなるとベイマックスは縮こまって自分の身を隠す。ヒロの自然治癒力を高める看護師役なのだ。
この「ベイマックス」の原案は6人の日本人スーパーヒーローを主人公としたマーベルコミックの「ビッグ・ヒーロー・シックス」であり、2009年にディズニー社がマーベル社を買収した後、マーベルの中で映画化できそうな作品として同作品が選ばれた。この作品を見るとわかるのは、日本の科学やアニメへの尊敬の念である。日本の看護についてのイメージをディズニーがどのように持っていたかは不明だが、この映画を見た外国人が「日本の看護ロボットの開発は進んでいるのだろう」と思ってもおかしくはない。しかし、日本では電子カルテ化など、新しい取り組みへの対応が遅い傾向にあり、複雑な気持ちになった。
そんな映画を見ながら、ケアプロのセルフ健康チェックの現場でもいずれは「ケアちゃん」なのか「プロくん」なのかわからないが、看護ロボットが活躍する日も来るだろうと思った。店頭での集客、検査の受付、アルコール消毒などのアレルギー体質チェック、食生活や家族歴に合わせたメニュー紹介、自己採血の補助、検査、結果説明、運動方法や調理方法などのデモンストレーション、医師への遠隔相談、医療機関紹介など。利用者一人ひとりの情報を忘れずにインプットしてリピーターの方には前回からの変化などを把握した上で対応する。もちろん、日本語以外にも外国語や手話などにも対応可能である。
そういった機能は当然重要だが、ロボットを作る上でベイマックスから学んだのは見た目や仕草の大切さであった。ベイマックスの場合、1)鈴をモチーフにした親しみのある顔とつぶらな瞳、2)マシュマロのような柔らかなボディ、3)ペンギンのようなよちよち歩きだ。一言で言うと「大きな赤ちゃん」のようであった。機能とデザインとコストのバランスはあり、ロボットは機能重視の傾向があるが、デザインが重要である。
ある意味で、ロボットという擬人的な対象に何を求めるのか、ということを考えることで、人間に求めることも明確になる。アニメの世界の話ではあるが、アニメの中の理想を、映画館にいた小さい子供から大人まで多くの人々が求めていた。流行っているものには理由があり、医療界が学ぶことは沢山ある。
※なお、本文は「厚生福祉(時事通信)」への掲載記事に加筆・修正したものです。