2014年12月、看護教員の田中美延里先生(愛媛県立医療技術大学)と岡田麻里先生(県立広島大学)が、ケアプロに見学にいらっしゃった。看護師が立ち上げ、看護師中心に事業展開をしている組織が珍しいということで、実際に現場をご覧になりたいということだった。
ケアプロのユニフォームを着ていただき、社内担当者と現場(訪問看護同行、セルフ健康チェック店舗)を見て頂きながら、事業の「理念」「ビジョン」「戦略」などをお伝えし、私もランチと最後の振り返りに参加した。
そして、お二人の先生から研修後にレポートを頂いたので紹介したい。
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研修を振り返って、「看護の力で社会が変わる 社会の力で看護が変わる」。
研修を終えて、私たちが感じたことです。
漠然とした夢を描くのではなく、ケアプロには「ミッション」「理念」が掲げられ、明確な「ビジョン」を実現するための具体的かつ計画的に練られた「戦略」がありました。
マーケティングにより乗降客10万人以上の駅に注目するなど、データに基づく論理的思考が随所に感じられました。事業の拡大に伴い社員が増えた現在、ミーティングではこれまで以上に「ミッション」に立ち返ることを大切にしているというお話が印象に残りました。
自己採血によるセルフ健康チェックサービスが法的にグレーゾーンであったため、イベントや出店の中止が相次いだ経緯をお聞きしました。
大きな壁にぶつかり心折れそうな経験にもかかわらず、あきらめず立ち向かえたのはなぜ?という疑問が湧きました。社会の課題を解決するという信念があったからでしょうか。
政策転換までの地道な活動は、看護系団体・関係者との人脈だけでなく、地球規模で未来を展望した異業種との交流にも支えられたのではないかと思いました。
ケアプロには、一生ここで働くと決めたわけではなく、キャリアビジョンを描き、これまでの経験を活かして「参加」し、経験から学ぶことでキャリア形成をしなやかに加速させようとしている方もいらっしゃいました。
社会に役立つ新しいものを作り出すために羽ばたくことを支援する企業であることがわかりました。
マネージャーのお一人から、高校時代から自分で事業を立ち上げる将来像を描いていて、大学に入学して間もなくナースを主人公にした漫画の作者や看護職の議員、終末期在宅ケアを担う訪問看護師から講義を受けたというお話を聞きました。
基礎教育のなかで看護の多様な社会貢献モデルに出会う機会があったことがわかりました。エネルギーを持て余す“やんちゃ”な大学生だったとしたら、カリキュラム外の活動でも働くことの多様性に触れていたのではないかと想像しました。
研修でお会いできたケアプロの皆さんには「看護の力で社会を変えられる」という確信があり、実際に新しい看護のあり方を示していると思いました。
高齢化の進展と保健医療を取り巻く環境の変化を背景に制定された「看護師等の人材確保の促進に関する法律」(平成4年)から20年余、我が国の看護系大学は230校を超えました。
今回の研修を通して、社会の力で変わった看護によって大切に育てられたナースたちが社会に求められる新しい看護を生み出していることを実感しました。
「看護の力で社会を変えられる」ということを、私たちは教育者として、学生にメッセージを伝えられているだろうか・・・伝えていかなければならないと思いました。
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過分なお言葉を頂いたが、今後の社会に求められる看護師教育に少しでも役に立てば幸いである。
看護教育では、起業やビジネスについて学ぶ機会はほとんどない。
ただ、看護学生の中には、看護師として起業やビジネス分野でのキャリアを切り拓こうと考えている学生もいる。そのような学生に、こんな会社があるよ、とお伝え頂く先生が増えていくと嬉しい。
田中先生や岡田先生だけでなく、起業やビジネスと看護の可能性を考えてくださっている方は多いため、そのような看護教員の方には是非見学、研修にお越しいただければ幸いである。
PS
田中先生、岡田先生、この度はありがとうございました。先生方がユニフォームを着て見せてくださる素敵な笑顔が印象的でした。
※なお、本文は「厚生福祉(時事通信)」への掲載記事に加筆・修正したものです。