日本地域看護学会で、
地域包括ケアにおけるITの活用に関するシンポジウムで、
「ケアプランAI」の発表をしました。
発表後、質問が多く、関心や不安について、よくわかりました。
厚生労働省の研究事業に2年半前から関わっており、
78000人、30万件のケアプランのデータを分析、
1、どのようなニーズ分類があるのか?
2、どのような目標分類があるのか?
3、どのようなサービス分類があるのか?
4、どのような予後になるのか?
5、どのような対象、ニーズ、目標、サービスが、予後を良くするのか?
について、課題はありながらも、これまでのビッグデータを踏まえて、明らかになることがありました。
なお、今回の研究では、
Aさん「痛みの緩和を図りながら、治療を継続し、体調管理をしていきたい」
Bさん「体調を管理して、身体機能低下を防ぎたい」
と二つの文章があったときに、この違いをコンピュータに理解させるところから始まりました。
大切なテキスト情報ほど、そのままでは、コンピュータは活用できないのです。
テキスト含意分析と構造化をすることで、
Aさん ①体調を維持して生活したい ②痛みをコントロールしたい
③定期的に受診したい
Bさん ①体調を維持して生活したい ②身体機能を維持したい
と構造化し、コンピュータが活用できるようにしました。
そして、乗り越えるべき課題が整理され、課題を一つ一つ解決するように、
プロジェクトを進めていくことで、世の中で活用されるレベルに到達しそうです。
まず、AI 活用における倫理的な課題として、
① AI 開発に使用されるデータの限界をどのようにして解消するか?
② AI を活用したケアプランに瑕疵があった場合、誰が責任を負うか?
③ AI 開発におけるガバナンス(透明性等)をどのように遂行すべきか?
④ プライバシー性や機密性が高いデータの取り扱いをどのように行うべきか?
⑤ AI が提案したケアプランを誰が、どのように適用すべきか?
次に、AI が学習するデータの質における課題として、
①ケアプラン作成の個別化理念との矛盾
②電子化されていないデータの存在
③AI 分析で利用できるデータへの変換
④リハビリ的なケアと援助的なケアの区分
⑤疾病データの信頼性の向上
⑥現在利用可能なデータでは、利用者の状態や支援内容の正確な把握が困難
さいごに、AI の出力結果の課題として
①分析結果における専門家による解釈の必要性
②心身状態の変化におけるイベントの影響の排除
③自立度の低下における進行性の疾患の影響の排除
④フレイルによる自然な状態悪化をどのように組み込むか
⑤維持・改善における本人意欲の影響
⑥地域の社会リソースに関するデータの必要性
地域医療の利用者ニーズの収集、分析、プラン、評価の仕組みについて、
海外でも様々なものがあり、日本への導入も考えられていますが、
今回の研究では、「お風呂に入りたい!」という日本人らしさが出ており、
日本に蓄積されたテキストデータを活用して、
日本人同士(医師、看護師、ケアマネなど)が意見を出し合いながら、
どのようなツールが必要なのかを議論しながらつくる意義は大きいと感じました。