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2021.05.19

代表ブログ

訪問看護・介護の事業承継

この度、ケアプロは、小児の訪問看護・介護のスペシャリスト集団である株式会社エイチ・ユウ・ジー(東京都杉並区:代表取締役 上薗真由美、以下「HUG」)の全株式を取得しました。

 

2020年から猛威を振るう新型コロナウイルスにより、在宅医療・介護の現場に大きな影響を受ける中では、「守り」中心にならざるを得ませんが、中長期的な視点に立ったうえで、両社にとって積極的な事業承継に挑戦しました。

 

なぜ事業承継することになったのか。どのようなプロセスを経て、今回の合意に至ったのか。今後の展開として、どのようなことが考えられるのか。ブログでお伝えさせていただきます。

 

HUGの事務所は、高円寺駅から40秒

 

 

 

  • 上薗さんとトップ面談

 

事業承継の始まりは、機密保持契約書を締結した上でのトップ面談です。

 

ある方の紹介で、エイチ・ユウ・ジーの上薗さんを紹介いただきました。看護の大先輩で、小児領域でキャリアを積まれ、ケアプロと同じ、2007年にエイチ・ユウ・ジーを創業しています。小柄で、てきぱき、温かいまなざしで、小児への熱い想いを語る姿が印象的です。

 

最初は、お忍びで、ケアプロの訪問看護ステーションや本社にお越しいただき、ケアプロの雰囲気を感じていただきました。

 

まだ、この頃は、合意に至るか、定かではありませんでした。

 

 

  • なぜ、経営も順調な会社を事業承継に

 

決算等の基礎情報を分析したところ、事業は順調に成長されていました。

 

そのような中で、長年、小児分野で取り組んできたHUG代表の上薗さんが、第一線を引退することになり、事業承継を決断されたのです。

 

中野と高円寺で、それぞれの事務所が近く、創業年も同じで、共通することがあり、上薗さんも、ケアプロに一目置いてくださり、小児に強いわけではないケアプロに可能性を感じてくれました。

 

事務所前には自転車たち

 

 

 

  • 業界における事業承継のロールモデルに

 

令和2年に訪問看護ステーションは11,931箇所が稼働し、過去10年で2倍に増加しました。

 

しかし、令和元年の新規数1,376箇所であるものの、廃止数526箇所であり、事業継続や事業承継の課題があります。

 

HUGのように利用者もスタッフも順調に増え、経営も良い状態で事業承継できるケースが、今後のロールモデルになればよいと考えています。

 

 

  • 新型コロナウイルス感染症の中での基本合意

 

新型コロナウイルス感染症のまん延により、今回の話もなくなる可能性はありました。

 

ただ、そのような中でも、話し合いを重ねました。

 

基本合意はケアプロからのプロポーズへの合意であり、事業承継を希望する目的や事業価値、価値算定の根拠、最終合意日などが明記されます。

 

ただ、一般的なプロポーズと違って、基本合意ができても、最終合意に至るとは限らないことが多いのです。

 

 

  • 貴重価値=小児の看護・介護のプロフェッショナル集団

 

HUGは、2007年の創業から、杉並区や中野区を中心に、病児や障害児者の訪問看護や居宅介護、相談支援、移動支援、レスパイト等を行ってきました。

 

現在32名で、看護師や介護福祉士、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士らの多職種が在籍しています。

 

「小児や病児、障害児なら、HUGへ!」と胸を張って言える組織です。

 

20代から60代までダイバーシティに富み、平均年齢46歳です。

 

14年の月日があっても、このような組織を作り、地域のご家族に信頼される事業を展開していくことは容易ではありません。

 

事業を承継させていただかなければ、これほど多くの小児専門の仲間と一緒に働くことはできないことを思うと、会社法に基づく、株式会社の株式譲渡スキームには感謝しています。

 

地震の揺れを確認する役割

 

 

  • HUGのミッションへの共感

 

上薗さんや髙野さん、清水さんに、HUGへの想いを伺う中で、抱き方やうつぶせ寝のポイント、家族支援で大切にしていること等を具体的に教えていただきました。

 

組織のミッションである、病児や障害児者の生きやすい、暮らしやすい社会の実現に貢献する」ということを体現されていました。

 

私自身が、幼少期に神奈川県立こども医療センターで手術や入院をしたことを思い出しました。全身麻酔をし、気管切開し、絶飲食で、話すこともできず、自分の不安以上に、親が不安に思っていることを子供ながらに感じていました。

 

治った時に良かったねと涙を流しながら喜ばれる一方で、治らない子供たちは可哀想だと思われ続けることに、子供ながら違和感を感じ、医学中心のシステムでは、診断され治す対象になり、治らなければかわいそうにしていることは社会が作り出していることに気が付いていきます。

 

病や障害があっても、生きやすい、暮らしやすい社会のためには、ケアが広まることが必要です。

 

ケアプロでは、21世紀のヘルスケアシステムを、キュアからケアにパラダイムシフトするために、革新的なヘルスケアサービスをプロデュースしてきているため、小児分野において、HUGと取り組めることは非常に嬉しく思っています。

 

 

  • HUGとケアプロの相乗効果

 

1+1=2以上になる取り組みになるかが重要です。

 

しかも、それは、それぞれが1以上になることになる2以上です。

 

さらに、未来のことを、現時点で、信じられるかどうか。

 

そのため、HUGやケアプロの現場管理者も交えて、両社で大切にする価値観やビジョン、事業承継の方針について認識をすり合わせました。

 

 

  • 明確になった、両社の事業承継の目的

 

<HUGの目的>

・小児のプロ集団であることを大切にしつつ、企業化して更なる発展

・採用強化と組織拡大、エキスパートの教育等の役割拡大

 

<ケアプロの目的>

・総合訪問看護ステーションとして小児強化、居宅介護等への参入

・中野・杉並での地域基盤強化

 

 

  • ケアプロの総合訪問看護ステーションとHUG

 

ケアプロでは、総合病院ならぬ、総合訪問看護ステーションが、大都市を中心に、ある程度の割合で必要であると考えています。

 

医療機関が、かかりつけ医、専門クリニック、専門中小病院、中規模総合病院、大規模総合病院といった形で、機能分化し、多様な地域ニーズに応えられるようになっているのと同様に、訪問看護や介護においても、同じような発展が必要であると考えています。

 

そのような中、小児分野や居宅介護、相談支援等をHUGとの連携により、強化できるようになったことは、非常に大きなシナジーとなります。

 

HUGにとっても、障害児から障害者へと移行する年齢のタイミングで、ケアプロがシームレスに連携していくことも可能になります。

 

小売流通も似ていて、パパママショップが、徐々に、肉専門などに進化し、商店街が発展し、スーパーマーケットができ、都市には百貨店、郊外にはショッピングセンターができています。

 

 

  • 改めて、解決すべき、小児の社会的課題

 

小児領域について、改めて、情報を収集・分析しました。

 

課題①:少子化社会において、医療依存度の高い重症児が増加

 

平成30年の医療的ケア児の全国総数は19,712人となり、過去10年で2倍に増加しています。小児の訪問看護利用者数のうち、難病や医療的ケアに該当する者の割合は、平成23年に比べて平成29年は約2.7倍です。在宅の医療的ケア児のうち48%が訪問看護を利用し、45%が居宅介護を利用しています(中医協資料R1.7.17資料より)。

 

課題②:小児に対応できる訪問看護事業所が不足

 

「第7次医療計画 在宅医療の体制構築に係る現状把握のための指標例」において、小児の訪問看護を実施できる訪問看護事業所数が指標として設けられています。そのような中、「都道府県別の在宅療養児に対する訪問看護ステーションの需給状況(西ら、2015年)」では、20歳未満の人口10万人当たりの20歳未満の在宅療養児への訪問実績のある訪問看護ステーション数には、都道府県間で最大6.3倍の差が存在しています。

 

課題③:小児に対応できる人材育成が課題

 

「緩和ケアに関して専門性の高い看護師が行う訪問看護師と同行訪問の実施可能性(清水ら、2014年)」によると、0歳から18歳の在宅療養児への訪問看護を実施していない訪問看護ステーションが在宅療養児の訪問を実施しない理由は、「小児訪問看護の経験がある職員がいない」「小児看護を担当する職員がいない」を合わせて62.2%でした。

 

課題④:小児経験者でなければ難しいという常識

 

小児の訪問看護・介護事業所では、小児分野での経験が採用条件となっている事業所が多く、たとえ、未経験で小児の訪問看護・介護の事業所に就職したとしても、定着が難しいという専門家の声が聞かれます。

 

課題⑤:介護離職と看護離職

 

介護・看護の理由による離職者数は、2016年時点で85.8千人となっています。今後の少子高齢化による生産人口の減少の中で、働き手の確保と、働く人のキャリアのために、子供や親、家族の介護や看護において、活用できる社会的資源が身近にあるかどうかは重要です。

 

 

  • クロージングは、大安

 

大安である、5月19日(水)で決定しました。

 

株式譲渡契約書の調印をし、契約自体はひと段落しました。

 

なお、契約交渉のため、お互いに専門家の助言を得ていました。

 

今回はケアプロの株主であるソーシャルベンチャー・パートナーズ東京のパートナーをされていた頃からお世話になっている岩崎さん(楠・岩崎・澤野法律事務所)に、本件の法務面のデューデリジェンスや契約関係のリードをしていただきました。

 

また、取締役の寺西さんや朝比奈さん、両社の関係者が、いろいろな対応をしてくれました。いつも心強く、感謝しています。

 

 

  • 最優先は社員と利用者、ご家族

 

社員が安心して就業を継続し、利用者やご家族が安心してサービスを利用し続けられることを最優先に考える必要があります。

 

そのため、社員や利用者への説明を丁寧に行っています。

 

 

 

  • 事業承継の方針

 

事業承継は、理解し合う時期、連携を模索する時期、連携効果を実感する時期がありますが、両社の方針を明確に立てました。

 

方針①:みんなが安心できる承継にする

 

・HUG社員がこれまで同様の処遇や業務内容で安心して就業継続できる

・地域の皆様がこれまで同様に安心してサービスを利用し続けられる

・上薗さんが退任するまでに丁寧に経営の引継を行う

 

方針②:一緒になって良かったと思える相乗効果を出す

 

<HUGへの効果>

・ケアプロの採用ノウハウを活用して採用強化

・ケアプロの人材育成ノウハウを活用してHUGの人材育成プログラムを見える化

・オーバーエイジの障害者へのケアをケアプロと連携

・経営管理や労務管理等でIT活用推進による業務効率化

 

<ケアプロへの効果>

・HUGのサポートにより、小児の受け入れ増と品質向上

・総合訪問看護ステーションのブランドと地域基盤を強化

 

方針③:明るい未来を共創する ※具体的内容は、社外秘

 

 

  • おわりに

 

今回のプロセスの中で、上薗さんやHUGの皆さんの気持ちを少しでも理解できるように心がけました。

 

ここまで、小児に対して並々ならぬ思いで取り組み、働く人を大切にしてきたHUGという法人格が育まれています。

 

その人格を尊重したうえで、更にその強みが発揮できるように取り組み、事業承継してよかったと思ってもらえるようにしていきます。

 

HUGとケアプロは、対等な関係で、お互いを高め合っていきます。

 

左からケアプロ金坂、HUG清水・上薗・髙野、川添(写真:片山)

 

<参考>