組織成長なくして事業成長はない。しかし一組織の中だけでは社会人として、医療人としての成長機会は限られる。そこで、ケアプロでは1年間働くと最大10万円の自己啓発手当を支給する制度をスタートした。社員は自らの意思で自らの成長のために自由に使うことが出来る。先日、手当支給後の使用状況についての発表があった。
自己啓発手当使途を聞いていると、大別できた。まず、スペイン語、英語などの語学系。次に、プログラミング、アプリ開発、イラストレーター教室などのIT系。さらに、社労士、簿記、福祉住環境コーディネーター、フィナンシャルプランナー、秘書検定などの資格系。そして、学問書、美文字、統計学などの学問系。中には高級人間ドックを受けて人間ドックや接遇の勉強をする者もいた。自己啓発手当とは違うのではという議論もあったが・・・。なお、資格系に高い関心があることがわかった。
その中で、意外な活用をした者がいた。普段はセルフ健康チェックの予防医療事業部で働いている看護師の山下だ。彼女は別事業部の在宅医療事業部での訪問看護研修を受けたいと言ったのだ。同じ会社なので無料でもいいと思ったが、他事業部にお金を払ってでも勉強したいという気持ちを尊重した。そして他事業部もお金を頂くからには、と学習目標達成に必要な研修を用意した。
そして山下の報告の中で、「70代女性、独居、がん末期の方への訪問では『どうしても家に帰りたい』と、先週戻ってきた。定期巡回・随時対応型の介護・看護利用中。1日4回ヘルパーが身の回りの世話をしているとはいえ、30分程度/回ではできることが限られているのが現状。アクエリアスと豆腐の買い置きが山ほどありました。」「90代女性、息子と同居、老衰の方への訪問では、『昨日できたことができなくなっている』と息子さんが部屋に入るなり話されました。一時も目を離せない、とのことで寝られてなさそう。看護の対象は本人+家族。介護者向けの訪問健診、本気であったらいいなと思いました。高齢者住宅の担当者さんからも住宅のサービスとして健診ができないかとお話をいただきました。実現したら興味深いものになると感じました。法律的に制約とかあるのでしょうか?どうなんでしょう・・?」といったことが共有された。
自己啓発手当を導入した効果を振り返る。まず夏休みの自由研究的効果があげられる。自分で課題認識を持って、上司の命令でもなく出来る自由度がいい。一方で、仕事の中で自己啓発できていないこと、会社の中で不足していることが把握できた。会社としても啓発になる仕事や教育機会を考えるきっかけとなった。また、他人の自己啓発活動を見ると周囲も啓発され、周囲の人も字を綺麗にしようとか、語学を堪能にしようとか、ITリテラシーをつけよう、という波及効果があり、良い組織になっていく。
しかし、この制度の費用対効果を継続的に評価し、改善できることは改善する。もし不要であれば廃止する。今後も様々な制度を試していくことになるが、制度は作って終わりではなく、評価と改善がセットであることを忘れてはならない。(実際、来期からは申請や運用の方法についてリニューアルが決定済み)
※なお、本文は「厚生福祉(時事通信)」への掲載記事に加筆・修正したものです。