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公開日:2022/11/18

代表ブログ

ケアプロ在宅医療株式会社の株式譲渡について

はじめに

3.11をきっかけに、2012年からスタートしたケアプロの在宅医療事業にとって、大きな決断(株式譲渡の締結)をしました。最初は、少人数で、ユニフォームもなく、色々なトラブルもあり、大変でしたが、全国各地から熱い仲間が集まり、難しいと言われた新卒訪問看護師の育成やBCP開発、ICT活用、病院からの看護師出向受け入れ、訪問看護ならではの職群別人事制度と教育制度、AIシフト作成導入、所長・副所長・リーダーによる組織的運営などに取り組んできました。

この度の株式譲渡について、社内はもちろん社外の方々に、できる限り丁寧に説明していっていますが、ブログでも記載させていただきます。

 

株式譲渡の概要

ケアプロは、株式会社地域ヘルスケア連携基盤(CHCP)のグループ会社である株式会社CHCPナーシングケアとの間で、子会社のケアプロ在宅医療株式会社についての株式譲渡契約を締結しました(効力発生は後日です)。

ケアプロでは、「革新的なヘルスケアサービスをプロデュースして健康的な社会づくりに貢献する」ことを理念に、予防医療や在宅医療、交通医療を展開してきました。

そして、在宅医療事業の理念である「在宅医療の課題を解決し、“私らしく いきたい”を支える社会を創造する」ことを、さらに実現していくために、CHCPグループに参画することになりました。

 

なぜ株式譲渡 〜これからの地域医療を見据えて〜

全国に14,000箇所以上の訪問看護ステーションがある中で、1事業所5名以下が多く、利用者49人以下の小規模事業所が47.2%であり、令和2年の廃止数は541箇所です。ケアプロでは、1事業所30名以上の総合訪問看護ステーションを運営しています。

これからの訪問看護ステーションは、まずは規模を大きくし、機能を高め、法人の中で複数の事業所を持つことで、組織的な人材育成やICT活用が進み、品質や経営効率が高めていくことが求められます。

さらに、訪問看護だけでなく、病院や薬局、歯科などとの連携を強めるような総合的な地域医療サービス事業者の一員になることで、専門職の壁を超えた人材育成や情報連携が進み、緊急時対応も円滑になり、更なる品質向上が期待できます。

 

 

コンビニエンスストア業界のようにモノではなく、ヒトが重要な業界であるため、小規模でももちろん力はありますが、24時間365日、がんや難病、精神、小児などの幅広い療養者のニーズに応え、新卒から妊産婦、高度実践者、プラチナ(60代以上)などの多様な働き方を求める職員のニーズに応え、持続可能な在宅医療システムを構築していく上では、ある程度の規模と機能を持つ事業者が必要になってきます。

小売業が、パパママショップから専門店(お肉、お魚など)となり、商店街が発達し、総合スーパーができ、ショッピングモールや百貨店ができ、全国的なプラットフォーマーができるのと同様に、地域医療サービスにおいても、同様の流れがきています。

 

なぜCHCP 〜地域ヘルスケア連携基盤〜

CHCPは、これからの地域医療を見据えて、地域ヘルスケアの連携基盤を目指しています。CHCPの共同代表である国沢さんは、元ケアプロ取締役であり、医師の武藤さんも以前から懇意にしていました。CHCPでは分散している医療機関(医科:現在1,476床・歯科:現在1医院)・調剤薬局(現在170拠点)・在宅系サービス(現在217拠点)等を集約し、規模の経済、オペレーションの効率化・高度化を推進することで、同一グループのもと、医療機関(医科・歯科)・調剤薬局・在宅系サービス等の真の多職種連携(=エコシステム)を推進し、サステナブルなヘルスケアプラットフォームの構築に取り組んでいます。

そして、CHCPの大元は、ユニゾン・キャピタル株式会社(これまでスシローなどの経営に関わっています)であり、私がアショカ・フェロー になる時から共同経営者の山本さんや片柳さんらと懇意にしています。山本さんと一緒に行ったイギリスのアショカ・サポート・ネットワークの会合では、同じくアショカ・フェロー のヨス・デ・ブロックさんが経営するオランダのビュートゾルフの現場同行をさせてもらったことが思い出されます。

 

なぜ今

2042年に高齢者数がピークを迎えます。一方で、人口減少は待った無しです。さらに、日本経済の鈍化と社会保障財源の枯渇リスクが高まっています。オンライン診療の活用や包括指示、特定行為による看護師の高度実践機会の増加も期待されています。そのような中、病院や薬局、歯科、介護サービス等が地域包括ケアという絵はあるものの別法人のために実際には情報連携や人材連携が進まない状況が続いています。このような中で、今回のご縁がありました。

 

実際の検討プロセス

ケアプロ在宅医療代表の金坂やその他のマネジメント職、グループ統括の中澤らが中心となって、CHCPの皆さんとやりとりしました。詳細のデューデリジェンスに関するやりとりは大変でしたが、短期間でスムーズに進みました。そして、改めて、大きな方針や具体的なシナジー、今後の体制、社内外への広報などをすり合わせました。

一番重要なことは、職員や利用者にとっての影響ですが、ケアプロやHUG(小児専門)の運営方針については今まで通りであり、問題はありませんでした。

 

今後の体制

効力発生後の体制は画像の通りです。ケアプロ在宅医療株式会社という名前はそのままであり、ケアプロとして経営サポートの関係を持ちます。川添としては、ケアプロ在宅医療の取締役に加えて、CHCPの在宅サービス全体を担う株式会社CHCPホームナーシングのエグゼクティブ・フェローに就任します。

株式会社N・フィールドは、訪問看護を中心に事業展開しています。

 

ケアプロ在宅医療の組織

効力発生後のケアプロ在宅医療の経営体制は、下記の通りとなり、ガバナンスや体制が強化されます。

代表取締役 金坂宇将
取締役 川添高志(株式会社CHCPホームナーシング エグゼクティブ・フェロー)
森本立成(株式会社CHCPホームナーシング 執行役員)
大草隆次(株式会社CHCP 執行役員)
末武迪彦(株式会社CHCP ディレクター)
監査役 宮本淳夫(株式会社CHCP ディレクター)

組織図は、下記の通りです。

 

寂しさと期待

大切な在宅医療事業の株式を売却することは寂しい気持ちもありますが、ケアプロでは、節目節目に、良い方々と共通する理念に対して挑戦して大きな社会的インパクトを出してきました。そして、超高齢多死社会の中で、在宅医療を一社でやるのではなく、CHCPの皆さんを信じて、グループとして大きく取り組むべきだと判断しました。

これから、CHCPグループ内での人材育成や情報連携、事業連携等に関する取り組みが楽しみです。

 

システミックチェンジ ~基盤があれば変わる~

これまで、「制度」と「医療・介護等の民間事業者」、「患者」、「従事者」の関係で、実は大きな問題だったのが、異なる法人の民間事業者が、異なる電子カルテや人材育成システムなどを共有しにくかったことです。これは、新型コロナウイルス感染症への対策においても明らかであり、政府から提供されるシステムでは対応できない部分を各事業者が手作りしていました。

しかし、コンピュータやスマートフォンのようにOSという基盤があると、様々なアプリが動き、アプリの連携もしやすくなり、ユーザーの便益は大きく向上します。

そのため、共通の「基盤」で「民間事業者(アプリ)」を動かすことができれば、スムーズな連携があり、「患者(ユーザー)」や「従事者(ユーザー)」に対して、多様な選択肢が提供できます。

デジタルの世界では、基盤を作ってからアプリが作られますが、現実の世界では、小資本でできる分野はアプリが先行し、その後に基盤が作られます。大資本が必要な鉄道等は最初からセットで作られます。ただ、現在の地域医療は一つ一つは小さいものの全国的にみると大きなインフラです。ただ、そのインフラが、まるで鉄道会社が10万社あり、つながりにくいような状況です。そのため、そろそろ地域医療を見直すための基盤が必要なのです。

 

今後の業界再編

今回は、子会社の運命を決める意思決定ですが、この事例が、業界の統合や再編を加速させるくらいの呼び水になればと思っています。

すでに、訪問看護ステーションは、営利法人が多く、事業承継や統合がしやすい状態になってきました。老舗事業所は、事業承継の課題があり、若手事業所は、事業成長の課題があります。

 

 

おわりに

社会課題を解決する組織には、非営利組織(NPOやNGO等)も営利組織もあります。株式会社としては、「株主と出資金という存在(ガバナンスとファイナンス)」や「会社法によるM&Aという選択肢(事業戦略と組織戦略)」、「譲渡益の活用(中長期での新規事業創出)」といった特徴があります。

とある株主の方からは、今回得られる譲渡益を配当してもらいたいというよりも、ケアプロとしての今後の事業投資に活用していってほしいという言葉を頂きました。

昨今、SDGsやESGを考えた投資や事業の必要性が高まっていますが、ヘルスケア事業を営む株式会社は、成長分野かつSDGsやESGに直結する事業であり、投資も呼び込みやすいと言えます。

このような情勢を追い風にし、社会的にも経済的にも良い循環を作り、持続可能な社会づくりに貢献していけたらと思います。