医学書院「訪問看護と介護(7-8月号)」に特別記事として、「2040年の訪問看護事業所のあるべき姿〜大都市部で効果・効率的な訪問看護を実現するために〜」を寄稿しましたので、ポイントをお伝えします。詳細は、書籍をご覧ください。
大都市では看護師50人規模の事業所が必要になる
2040年の大都市における訪問看護モデルのビジョン「総合訪問看護ステーション(仮称)」を提案します。
ケアプロ訪問看護ステーション東京がある東京都中野区は、1キロメートル四方に2万人以上の人口がいます。「大都市」に該当する地域と言って差し支えないでしょう。このような人口密集地では、看護師とセラピスト10名未満の小規模な訪問看護事業所が点在する現在のあり方ではなく、看護師とセラピストが50人程度所属する大規模な訪問看護事業所を戦略的に配置すると、地域の医療のあり様として効果的かつ効率的なものになると考えています。
このように考える背景としては、下記があります。
- 日本全体の人口構造の変化に伴い、生産性向上が求められる
- 続く、大都市への人口集中傾向
- 訪問看護従事者が増加も、小規模事業所に分散
- 事業所の開設や廃止、休止が多い
- 営利法人が増加している
- 世代ごとにそれぞれの課題
- サービス業や小売業で見られる成熟下の寡占化構造
- 自由開業制と地域格差
50名規模の総合訪問看護ステーション(仮称)の役割
「総合訪問看護ステーション(仮称)」はどのようなことを狙った事業所であるのか。現時点では、以下の9つの役割を持つことを構想しています。
- 大都市では、1事業所当たり看護職を50人程度の「総合訪問看護ステーション(仮称)」を推進する
- 単に規模を大きくするのではなく、訪問看護の機能強化と効率性を高める
- 「総合訪問看護ステーション(仮称)」の中に、いくつかのチームを構成し、チームリーダーを中心としたマネジメントを行う
- チームは、地域別チームのタイプと、専門別チームのタイプとすること。専門別チームはセラピストなどのチームを想定し、地域全体をカバーする
- 看護小規模多機能型居宅介護を併設する
- 地域内で、事業承継や事業統合をしながら、大規模化を推進していく
- 新卒や子育て世代、プラチナナースなどの多様な働き方の受け皿となることや、小児からがん、難病、精神などの多様な利用者のニーズに対応する
- 災害対策等の地域の多様なニーズに対応していく
- 小規模の事業者が乱立しやすい規制を変え、地域医療計画に沿った在宅看護体制の整備を推進する
50名規模の総合訪問看護ステーション(仮称)の期待効果
このような「総合訪問看護ステーション(仮称)」が存在することでどのような効果が期待できるでしょうか。
- 看護師一人当たり訪問件数の増加
- 看護師の報酬増加
- 平均訪問距離の短縮
- 看護師一人当たり夜間待機回数の減少
- 土日祝日や夜間の営業対応能力向上
- 対応できる専門領域の拡大
- 看護師の知識や技術、経験の向上
- 多様な働き方の実現
- 医療機関やケアマネジャーとの情報連携の推進
- 看護師一人当たり間接コスト(事務・管理の人件費や事務所、システム投資など)の抑制
- 経営人材の育成
- 衛生材料等の在庫管理の集約
高齢者人口がピークを迎える2042年までのことを考えると、2023年から2032年までの10年間に布石を打っておく必要があります。