骨粗しょう症って何がコワイの?

公開日:2023/01/12  最終更新日:2024/01/18

こんにちは。この記事はケアプロ予防医療事業部の看護師スタッフが監修しています。

 

「歳を取ると骨がスカスカになる。」

「骨密度が低くなると骨折しやすくなる。」

 

「骨粗しょう症」という言葉を耳にすると、こういったイメージを持たれる方が多いのではないかなと思います。

 

確かに、骨密度は年齢とともに低くなることが多く、それに応じて骨折する確率が高くなっていくのは事実です。

 

また、そのように低い骨密度で骨折しやすくなった状態を骨粗しょう症と呼ぶので、間違った認識ではありません。

 

しかし、

骨粗しょう症のリスク」をしっかりと認識しているか、と問われるといかがでしょうか?

 

一見すると、ちょっと何を言ってるのかわからないかもしれませんね。

 

結論から言うと、

骨粗しょう症が原因で起こる骨折はとてもコワイ

ということです。

 

詳しくは後ほどお話しますが、

骨粗しょう症によって起こる骨折は、その後の生活はもちろん、健康寿命にも大きく影響します。

 

この記事では、そんな骨粗しょう症について、

・どんな病気なのか。

・病気の原因とは。

・どんな人がなりやすいのか。

・どうすれば予防できるのか。

看護師スタッフの監修の元、解説していきます。

 

骨粗しょう症ってどんな病気?

骨粗しょう症とは、さまざまな原因で骨の密度が減ることでもろくなり、骨折しやすくなる病気です。

 

骨の密度が減ると、

・つまづいて手をついたとき

・尻もちをついたとき

・転倒したとき

などで、手首の骨や背骨、脚の付け根を骨折することがあります。

 

一般的に、骨粗しょう症というとこの症状が有名です。

手首の骨折も普段の生活に支障が出るため重大ですが、背骨や脚の付け根を骨折してしまうと寝たきりなどに繋がるため大変危険です。

 

また骨粗しょう症が進行すると、転倒などをしていなくても、体の重さで背骨が圧迫され押しつぶされてしまうことがあります。(=圧迫骨折)

 

その結果、

・背中や腰が曲がる

・痛みがある

・身長が縮む

というリスクを伴うため、骨粗しょう症は早期に進行を止める・遅らせる取り組みが重要です。

 

骨粗しょう症の人って何人いる?

現在、日本の骨粗しょう症の男性患者数は300万人女性の患者数は980万人ととても多く、日本社会の大きな課題です。(骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン2015年版

 

基本的に成人期以降は、加齢と共に骨の密度が低くなるため、年齢が高いほど骨粗しょう症の人は多くなります

2021年では30年前と比べて平均寿命が男女ともに約5年伸びているため、骨粗しょう症の患者数は増加していると考えられます。

 

骨粗しょう症の原因は?

骨粗しょう症の原因は、大きく

・原発性

・続発性

という二種類に分けられます。

 

骨粗しょう症というとカルシウム不足が原因と思われがちですが、そんなことはありません。

 

食習慣はもちろんのこと、加齢やホルモンバランス、病気の影響や薬の服用も骨密度には影響します。

 

原発性骨粗しょう症

原発性骨粗しょう症とは、加齢や生活習慣などの様々な原因が含まれる骨粗しょう症のことを指します。

 

主な原因としては以下のようなものがあります。

 

骨の大きさや形

若い時に最大まで骨量を増やせなかった。

 

性ホルモンなどの内分泌の代謝異常

閉経や病気によってエストロゲンが減少し、骨の形成が追いつかなくなった。

 

栄養バランスの崩れ

骨の形成に必要な成分である、カルシウムやビタミンD・Kが足りなくなった。

 

加齢

食事量が減り骨の形成に必要な成分が不足したり、筋力の低下や活動範囲の縮小などで骨への負荷が減った。

 

それぞれ、生活習慣を見直すことで予防や対策ができるため、自分の体の状態をチェックして、適切な行動をとることが重要です。

 

続発性骨粗しょう症

続発性骨粗しょう症とは、病気や薬などの影響によって二次的に起こる骨粗しょう症のことを指します。

 

主な原因としては以下のようなものがあります。

 

内分泌の病気

原発性副甲状腺異常亢進症、クッシング症候群、甲状腺中毒症(甲状腺機能亢進症など)、性腺機能不全、糖尿病などが当てはまります。糖尿病は生活習慣が原因でない場合もあります。

 

栄養バランスの崩れに繋がる病気

胃がんなどによる胃切除、神経性食欲不振症、ビタミンC欠乏症、ビタミンAまたはD過剰などが影響します。

 

薬の服用

ステロイド薬、抗けいれん薬、ワルファリン、ヘパリンなどの薬が影響することがあります。

 

生活習慣による病気など

糖尿病、慢性閉塞性肺疾患、アルコールの過剰摂取などが当てはまります。

 

先天性の病気

骨形成不全症、マルファン症候群などが当てはまります。

このように生活習慣だけが骨密度の変化に影響するわけではないので、骨密度が下がった場合はさまざまな原因を考える必要があります。

 

骨の強さってどうやって決まるの?

ここまで骨粗しょう症の中身や原因についてお話ししてきました。

 

ではそもそも、骨の強さとはいったいどうやって決まるのでしょうか

 

骨の強さとは、一言で言えば骨折のしにくさです。

 

鉄筋コンクリートで想像するとわかりやすいのですが、

同じ鉄筋コンクリートでも新品の鉄筋が数多く入っている方が強靭で折れにくくなります。

 

 

骨もそれと同じように、

骨の密度が高く、骨の質が良いほど強くなり、骨折しにくくなります

 

骨の密度とは

骨の密度とは、骨を作るカルシウムなどのミネラルが一定の面積にどれだけ詰まっているかをみたものです。

 

いわゆる骨密度で、骨の強さに直結しているので検査ではよく見られる項目です。

 

骨の強さの大部分を決める要素なので、骨密度を高く保つことが骨折予防につながります。

 

骨の質とは

骨の質とは、骨の柱であるコラーゲンにカルシウムなどが均一にくっついているかどうかを示すものです。

 

先ほど、骨を鉄筋コンクリートにたとえてお話ししましたが、その鉄筋にあたるのが実はこの「コラーゲン」です。

 

 

コラーゲン、と聞くと「プルプルのお肌のために」のように柔らかいイメージがあるかもしれませんが、アキレス腱の主成分でもあり非常に力強い性質を持っています。

 

このコラーゲンが骨の中でふぞろいに形成されてしまうと、同じ骨密度でも折れやすくなります。

 

そのためコラーゲンが均等に形成されて、カルシウムなどが均一にくっつくようにすることが重要です。

 

このコラーゲンの生成については、生成を促進させるビタミンKや、コラーゲンの劣化を防ぐ葉酸などが関わっています。

 

骨粗しょう症のリスクは骨折しやすくなる…だけじゃない!

骨粗しょう症の主なリスクとしては、もちろん骨が折れやすくなることがあります。

 

しかし、骨折とはただ骨が折れるだけではありません。

折れる場所によっては、その後の生活に重大な悪影響をもたらします。

特に骨粗しょう症になりやすい高齢者は、骨が元に戻るまでに時間がかかるので大変です。

 

骨粗しょう症によって骨折しやすくなる部位は、背骨・脚の付け根・手首・腕の付け根です。

 

背骨を骨折した場合

背骨を骨折すると、背中や腰が曲がることで内臓が圧迫されることがあります。

 

そうなると息がしづらくなることも相まって歩行困難になり、内臓の働きが悪くなって栄養状態も悪くなるため、健康寿命や死亡率に大きく影響します。

 

また、一か所背骨の骨折をすると、他の背骨に負担が集中するため、さらなる骨折を誘発することがあるので十分に注意が必要です。

 

脚や手を骨折した場合

脚や手を骨折すると、身体を動かす範囲が狭くなったり、食事や排泄に解除が必要になることがあります。

 

また脚の付け根を骨折した場合、立って歩くことが難しくなり日常動作に最も悪影響を及ぼすため、手術が必要になります。

 

さらに、その手術の予後に関する報告では、1年以内には10%強、5年以内には30%強もの人がさまざまな合併症の影響で死亡しているとされ、術後にも大きなリスクがあります。

 

 

骨折は、骨折の際の痛みだけでなく、活動量や食事量の減少、そして寝たきりなど合併症の可能性を上げてしまう大変危険なものなのです。

 

特に寝たきりは、身体を動かすことで保ってきた筋肉・関節・内臓などの機能を衰えさせます。

 

そして身体の自由が利かずに気持ちが塞ぎ込んだり、刺激が減って生活のメリハリがなく日時の感覚が薄れていくなど、精神や認知機能にも影響します。

 

このように、骨折は生活の質を著しく低下させる点においても、大きなリスクをはらんでいるのです。

 

骨粗しょう症になりやすい人とは?

ここまで骨粗しょう症のリスクについてお話ししてきましたが、いかがでしょうか?

 

骨折が、その瞬間の痛みだけではなく、その後の生活や生命に大きく影響していることがよくわかったことと思います。

 

とはいえ、骨粗しょう症は誰もがなる病気というわけではありません。

 

誰もがしっかりと予防の行動をすることは重要ですが、中でも骨粗しょう症になりやすい人が存在します。

 

下記のパターンに当てはまっている場合は、自分の骨量の変化により一層注意をした方がよいでしょう。

 

加齢が進んでいる人

ご高齢の方は、食事量が減って骨の形成に必要な成分が不足したり、筋力の低下や活動範囲の縮小などで骨への負荷が減少するなどして、骨粗しょう症が進行しやすくなります。

 

また先述の、生命に大きなリスクがある脚の付け根の骨折については、80歳代が全体の半分を占めているため、十分な注意が必要です。

 

閉経後の女性

統計的には、閉経後の女性の骨密度が急激に減少することが知られています。

 

これは閉経によってエストロゲンが減少し、骨の形成が追いつかなくなることが大きな原因です。

 

このエストロゲンは、いわゆる女性ホルモンと呼ばれるもので、男性もごく少量ながら体内で生成されます。

 

エストロゲンはさまざまな効果を持ちますが、骨においては古くなった骨を壊す「破骨細胞」の働きを抑制する働きを持っています。

 

そのため、エストロゲンが減少すると「破骨細胞」の働きを抑えにくくなり、新しい骨の形成が追いつかずに骨密度が減少することになります。

 

栄養バランスに偏りがあったり、栄養不足の人

骨を作るのはタンパク質であるコラーゲンや、カルシウムなどのミネラルのため、その栄養が偏っていたり不足すると骨の強さに悪影響があります。

 

カルシウム、ビタミンD、ビタミンKなど、骨の形成を助ける栄養素が不足すると骨密度の低下につながります。

 

また少食になってタンパク質の摂取量が少なくなると、骨の土台であるコラーゲンの形成がうまくいかなくなり骨の質に影響します。

 

運動不足の人

運動は筋肉だけではなく、骨の形成にも大きく関わっています。

 

骨は運動などによって適度な負荷がかかると、細胞が活発になり強くなる性質があります。

 

逆に、骨への負荷がかからないと、骨からカルシウムが溶け出しやすくなるため、骨密度の低下につながります。

 

喫煙をしている人

肺や喉などの病気の原因で知られる喫煙は、実は骨にも影響します。

 

タバコの煙に含まれるニコチンの働きにより、食欲が抑えられます。

 

加えて、胃や腸の働きも抑えてしまうため、骨の形成に必要な栄養の吸収が阻害されます。

 

また、先述の破骨細胞の働きを抑えるエストロゲンの効果を邪魔するため、骨密度を低下させてしまいます。

 

多量の飲酒をしている人

多量の飲酒をしている場合、胃腸からのカルシウムの吸収を邪魔することがあるため、注意が必要です。

 

またお酒には利尿作用があるため、必要な分のカルシウムが体外に流れ出てしまい、骨の形成に影響を及ぼします。

 

日光に当たらない人

人は日光に当たるとビタミンDを生成します。

 

このビタミンDは体内で代謝されたのち、カルシウムの吸収や、尿からのカルシウムの再吸収を助けるほか、骨へのカルシウムの沈着を補助する働きをします。

 

日光の浴びすぎは皮膚への悪影響があるため、長時間の日光浴は推奨されませんが、極端に外出時間が短かったりするとビタミンD不足につながるため、適度な日光浴は必要です。

 

自分の骨の状態が気になったら…?

骨折すると強い痛みを生じる場合が多いですが、骨密度の変化は痛みがあるわけではないため、日常生活では何も感じません。

 

そのため、医学的な検査によって骨の状態を確認することがとても重要です。

 

超音波などを使って骨密度を測定する

超音波など、音波は透過する物質の密度が高いほど、より早く透過する性質を持っています。

 

その性質を利用して、骨の中にどれだけの物質が詰まっているのかを測定することができます。

 

X線を使って骨の状態をみる

超音波は音波ですが、X線は物質を透過しやすい電磁波であるため体の内部を見ることができます。

 

この場合、物質の密度が高いとレントゲン写真に影として写りやすくなるため、骨密度が高い骨はより濃い影となります。

 

採血・採尿をして骨の新陳代謝をみる

超音波やX線で体内を調べる他に、血液や尿に含まれる化学物質を測定することで骨の状態を調べることもできます。

 

骨代謝マーカーと呼ばれており、骨の吸収や形成において作られるさまざまな物質を見ることで、骨の状態を確認する方法です。

 

この骨代謝マーカーは郵送検査でも気軽に受けることもできます。

例えば下記のリンク先のようなものだと、骨吸収マーカーという「古い骨が分解される時」に尿中に放出される物質を測って骨の状態を調べます。

 

骨粗しょう症まとめ

いかがだったでしょうか?

 

骨粗しょう症は、一般には「骨が折れやすくなるちょっと怖い病気」という認識がまだまだあると思います。

 

しかし、骨粗しょう症による骨折がもたらす生活や生命への影響はとても大きなものです。

 

また、骨粗しょう症は自覚症状が特にないままに進行するため、気づいたら骨が折れやすくなっていたということがあります。

 

そのため、定期的な検査をして骨の状態を確認し、予防の行動をとっていくことがとても大切です。

 

もし気になるようでしたら病院での検査や、自宅で簡単にできる郵送検査を利用して、ご自身の骨の状態をチェックしてみましょう。

 

それでは最後までご覧いただき、ありがとうございました。

 

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