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公開日:2015/05/13

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健康格差対策のための挑戦的萌芽研究③

前々回から、パチンコ店でミニスカートのナース服を着たコンパニオンがいることで、パチンコ店利用者の健康行動を誘引することに関する研究について述べている。私たちは、「情緒的な誘導をした営業セッションのほうが、しない時に比べて社会経済的弱者の健康行動が多い」という仮説を立てた。そして、介入群は、情緒的刺激を含んだ勧誘として魅惑的な服装をした“コンパニオン”による接客を行った。対照群ではコンパニオンなしの接客とした。
<コンパニオン介入群>
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<コンパニオン非介入群>
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データは、2011年から2013年までの間でパチンコ店110店舗(計320回)の営業データ(N=8485)から、必要なデータがそろっていた8341名分を用いた。東京大学医学部倫理審査委員会の承認を得た。アウトカムは、①雇用状況:無職vs.有職、②健康保険の種類:国民健康保険vs.その他、とした。
まとめとしては、1)情緒刺激がある勧誘を行ったほうが、社会弱者(無職や国民健康保険)の健康行動が多かった。そして、2)予想に反して、女性のほうで効果が大きかった。限界としては、所得や詳細な既往歴の情報がないことであった。
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 今回の研究は、新たな“情緒アプローチ”の可能性として期待できる。1)理論上、すべての人に効果が期待できる。そして、2)社会的ストレスを抱えている人にほど、効果が高い。ケアプロのセルフ健康チェックの取組における知見は、今までアプローチできなかった層にアプローチできているが、それがなぜかを理論的に構築し、様々な健康対策に役立てられるようになれば幸いである。
※なお、本文は「厚生福祉(時事通信)」への掲載記事に加筆・修正したものです。